銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳-2 | フレンチブルドッグ:ファブとあものブログ

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銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳-2

 

 

大企業への融資も膨れ上がる

こうした問題は中小企業が中心だが、大企業にも不良債権のリスクは眠っている。日産自動車やANA(全日本空輸)のように、銀行に多額の融資を求める企業が増え始めた。新型コロナウイルスの感染者数も再び増加基調に戻りつつあり、第2波、第3波の懸念もある。大口融資先の問題も今後増加してくる可能性が高い。

銀行側も将来のリスクを意識している。3メガバンクの2020年度(2021年3月期)の計画では、融資先が破綻し、貸出金が回収できなくなる場合に備えて、損失として計上する貸倒引当金繰入額や、回収が不可能になり、確定した損失を計上する償却額などの与信費用を大幅に積み増している。

三菱UFJフィナンシャル・グループは、計4500億円(前年比2229億円増)、三井住友フィナンシャルグループも4500億円(同2794億円増)、みずほフィナンシャルグループは2000億円(同282億円増)の与信費用を見込んでいる。

地方銀行でも特徴的な動きが見られた。ふくおかフィナンシャルグループは2019年度決算で、福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行の傘下4行合わせて614億円の与信費用を計上した。これは、2018年度の与信費用51億円の10倍以上にものぼる金額だ。

そのうち、418億円は「フォワードルッキング引当」と呼ばれる新しい手法によるもの。景気のよかった直近の低い倒産実績を元に引き当てるのではなく、将来、景気後退が起きた際にどの程度倒産が発生するかを折り込んだ「予防的」な引き当てだ。つまり、ふくおかフィナンシャルグループは、将来的に倒産が増えるとみているということだ。

ただ地方銀行の多くが、ふくおかフィナンシャルグループのような引き当てができるわけではない。「引き当てを積み過ぎると赤字に陥ってしまうため、できない。本音ベースではもっと積んでおきたい」と大手地銀幹部は語る。

中には、将来リスクに備えるどころか、足元の影響に対する引き当てすら十分に積めていない地銀もある。ある地銀の財務担当者は、「将来に備えた与信費用の計上を検討していたが、営業担当者から『自分たちは倒産させないように支えているのに、なぜそんなことをするのか』と反対されてできなかった」と明かす。

こうした現状を鑑みると、各地銀が積んでいる与信費用では十分ではなく、不良債権の増大次第では自己資本を毀損してしまう銀行が相次ぐ可能性も否定できない。

不良債権の問題は実体経済から来る時限爆弾だが、銀行は金融市場の側でも爆弾を抱えている。実際、新型コロナウイルスが蔓延し始めた3月には、株価が大幅に下落し、多くの銀行で減損損失が発生した。

CLO多く抱え、「サブプライム再来」懸念

銀行が投資している金融商品の中でも、特に注意が必要なのが、CLO(Collateralized Loan Obligation=ローン担保証券)だ。金融庁や日本銀行がこの6月に調査結果を発表し、日本の金融機関に警鐘を鳴らしている。

CLOとは、信用力が相対的に低い企業への融資を束ねて証券化した商品だ。リスクの高いものを束ねて商品化する手法は、リーマンショックを引き起こしたサブプライムローンに通じるものがある。

世界のCLOの残高は、2018年末で82兆円にものぼるが、その市場における日本の金融機関のシェアはなんと18%にものぼる。3メガバンクや農林中央金庫、ゆうちょ銀行の保有が多いとされる。最も多い農林中央金庫は7兆7000億円ものCLOを保有している。

日本の銀行の言い分はこうだ。「保有するCLOのほとんどはAAA格でリスクは低い。さらに満期保有目的のため、満期まで保有すれば売却損は出ない」。だが、価格が大幅に下落すれば、話は別だ。減損損失から逃れられなくなる。

実際、CLOの価格は3月に大きく下落した。足元では金融市場全体が安定しているため大きな問題とはなっていないが、第2波、第3波が訪れれば再びマーケットが混乱する可能性はある。その際、ヘッジファンドなどが顧客からの換金要求に応じるために、CLOが投げ売りされ、価格が大幅に下落することもありえる。

新型コロナウイルスの感染者は再び増加しており、実体経済への影響はしばらく続きそうだ。現時点では倒産の連鎖も、金融市場の混乱も回避できているが、将来のリスクは決して小さくない。銀行が抱える爆弾の導火線には、火が灯っている。