お会計が済み、あたしはジュースを手に取り歩き出す…。だけど係長はまだ来ていなくて、スッと立ち止まっては自分の行動を振り替える。
(あれ…だめやんこれ。いかん…!あたしが先に歩き出すとか…。失礼すぎる……)
そう思って係長があたしの横を通りすぎるのを待ち、確認してからあたしも歩き出す。
すると…。
係長『なにで来たの?歩き?』
少し歩くペースを落として横に来てはそう問いかけてきた。
あたし『いえ、車ですっ』
係長『……。』
あたし『…?』
(え…?応答なし……?)
あたしは答えたのに、何故か係長はなにも言わずにただ歩いて行く…。
そのときの表情は真顔で…なにやら素っ気なかった。それでもあたしは。
あたし『ありがとうございましたっ!』
わざと大きめにそう言ってみた。
係長『いえいえ』
係長はこちらを振り向いて言ってくれたけれど、目線はあたしじゃなく地面に向けられていた…。
そのあとあたしは小走りで車に向かい、職場に戻っている間にご飯を食べながら係長におごってもらったジュースを飲む。
(まさか…あの係長におごってもらうなんてな……)
飲みながらそんなことを思う。
(そういえば…話しててもモヤモヤとかしなかったな…。なんでやろ…)
いつもは見ただけでもモヤモヤして胸が痛んだりしていたのに、さっきはそういうのは一切感じなかった。むしろ違う気持ちになっていて…。
(なんか恥ずかしかったもんな…)
自分の感情に疑問を覚える…。
(なんで話すとこんな気持ちになるんだろ…。仕事中はあんなに苦しくて辛いのに…。なにがこんな違うんかな…?)
そんなことを考えながら助手席でジュースを飲んでいると、あたしたちが職場に着いてから約30分後に係長が職場に戻ってきた。
あたし『…っ………』
その瞬間 心臓が一回バクっと鳴ってついついうつむいてしまう。
あたし『じゃ、行ってくる…』
お父さん『おう』
あたしは逃げるかのように車から降りて職場の中に入って更衣室へ。
(なんかな?ほんと…)
なんだかよく分からない気持ちに包まれる。
(わからんけど…でも、おごってもらったのは嬉しかった)
ロッカーに置いたジュースを見つめながらそう思い、切り替えをするとメイク直しを始める。すると仲のいい先輩がきた。
〇須さん『お店行ってたの?』
あたし『はい!係長とお店が被りました』
〇須さん『あ、そうねー?』
あたし『はいっ』
この時、あたしは係長に気を遣っておごってもらったことは口に出さずにいた。
(後々係長にはなしが回ったら迷惑になりそうだし…)
〇須さん『じゃあ行こう』
あたし『はい』
あたしは〇須さんと一緒に作業場に向かい、〇須さんはそのままトイレへ…あたしは既に来ていた先輩と話を始める。
先輩S『どこ行ってたの!?車の中におったよね?』
あたし『あぁ、買い出し行ってたんです』
先輩S『昼飯?』
あたし『はい』
(やはり聞かれたか…)
と思いながらふと前を見ると。
あたし『…??!!』
すごく離れた場所だったにも関わらず…係長がニヤつきながらこっちを見て新人君に何かを話しているのが見えた。そして新人君も何やら笑っていた。
(なに…?……もしかしてさっきのこと話してるん…?)
内心ちょっとムッとなってしまうも…気にしないようにして先輩とはなす。
すると話していた先輩がどこかへ行ってしまい、この場所にあたし1人になり…どうしよう。と思いつつもそのままその場所に…。
(午後からもがんばるか…!)
1人で気合いを入れて少しうつむいた時、すぐ後ろを係長が通ったのがなんとなくの気配でわかった。
そしてその数分後、係長が少し離れた場所から製品が入った箱をこちらへいくつも運んで来る…。それに気づいたあたしは少し前に移動して通りすぎるのを待っていた。
(通れるんかな…これ…)
通路が狭い上、物が色々あったためそうは思ったけれど、既に近くまで来ていたからなにもどかさずにいた。すると!
ガシャンっ…!!!
(ん…?)
斜め後ろの方から音が聞こえ、振り向く。
(やっぱりぶつかった…)
予想通りコンテナに当たってコンテナが動いた。
あたし『あははっ』
あたしはどかす前に思わず笑ってしまい…チラっと係長を見ると係長も少し笑っていた。
その後、係長がコンテナを動かしてそのまま進んで行ったけれど、あまりにも予想が的中してしまったため…おかしくて仕方なかった。
(係長には失礼だけど面白かった!)
そのあと係長を見るたびに思い出しては何回も笑いそうになった。
けれど、それを我慢して仕事に集中。
ーー…それから数日経ったある日、…気づくと係長を見るたびにまたあの時のような幸せな気持ちが溢れてきていた。
モヤモヤ、イライラは一切なく…ただただ嬉しくて楽しくてウキウキした気持ち。
(久々だな…こんな感情)
あのとき好きだった同級生に振られてから、もう4年以上…誰かを好きになったことはなかった。むしろ恋はしたくなかった。
けれど、係長に出会ってからといいもの…職場に着いて作業場に行っては係長が来るのを待ち…見かけるたびにウキウキになり、次第に服も少しオシャレしていたり、メイクも念入りにしていたり、髪型も気にしていたり…。
今までのあたしにはない女の部分が出始めていた。
だけどその時はあたしが係長に恋してるから。という考えは全くなく…ただ単に。という思考だった。
なんとなく係長が気になって好意持って…真面目に、時には喜怒哀楽激しくなりながらも毎日過ごしていたけれど、服装やヘアー、メイクだけは全て無意識だった。
なにも気にすることなく頑張り…そして恋と分かってから自分の中にあったモヤモヤは消えた。けれど、その先に辛い日々が待ち受けていることを予想していなかった…。ー
~続く~