ー数日後ー
この日もあの痛みとモヤモヤに包まれる。
親友『めぐは係長好きだと思うけど? 自分じゃ気づいてないだけで、めぐは係長が好きなんだって!』
この前言われた親友の言葉が何度も何度も頭によぎってくる。
(すきとかあり得ん…)
あたしは自分の心に問いかけることもなく勝手に決めつけた。
けれど日に日に痛みは強くなって増してくる…。
(まじでやだ…。あり得ないのになに…。ないない。あり得ないから)
どんどん溢れてくる気持ちを押し潰すように何回も同じことを思って痛みを消そうとする。けれどそれはもう逆効果で、係長が見えたり近くに来ると更に苦しくなる。それでもあたしは“あり得ない”の一点張り。 恋だと思いたくなかった。
そんな日が1週間以上続いたある日の朝。
この時期は台風がきていて雨も風も酷かった。
(仕事行けるんかな)
ちょっと不安になりながらも親に連れて行ってもらい、職場に入る。
あたし『おはようございます』
先輩H『おはよう。風すごいね』
あたし『ですね…』
それから数分経っても係長の姿が見えない。
(休み?…遅刻?)
あたしは何故か気になって何回も時計を見ては通路を見る。けれど50分になっても係長は来なかった。
工場長『朝礼します』
(え…?)
今日は月曜日じゃないのに工場長の声がかかり、先輩たちが動いたあとにあたしも工場長の近くに行く。
工場長『おはようございます』
みんな『おはようございます』
工場長『今台風も来ていて結構来れない人もいます。係長も崖崩れがあって身動きができないということで休みです』
(え……)
休みという言葉に反応してガッカリした気持ちになる。
工場長『人数は少ないですが頑張ってください。以上です』
朝礼が終わり、各作業場に戻る。
あたし『………』
(休み…か……。だから来なかったのか…)
あたし『……』
今日1日見れないと考えたら一気にテンションが下がり、苦しくなる。
このときの苦しさ。それは今までよりもかすかに強く…ため息しか出ないくらいどうしようもなかった。
それでも仕事は頑張った。バレないようにため息をつきながらも必死に。
いないとわかっていてもふと係長がいつも作業している場所を見つめてしまう。
(朝礼で休みって聞いたのにあたしなにやってるんかな…)
どこかで信じたかったのか…つい作業場を見てしまうこの行動。
お昼休みになっても係長のことは頭から離れずただボーッとして周りにいた先輩たちともあまり話せないまま作業場に戻る。
あたし『……』
作業場に行くと必ず目に止まるあの人の姿。けれど今日は目に止まるどころか見ることもできない。
(寂しい…)
ふと出てきた想い。このとき…あたしは少し自分の気持ちに素直になってみた。
(係長がいなくて…見れなくて寂しい…。目で追ったり探したり…今日はできないんだよね…。明日は来るの?……会いたい…)
あたし『……』
素直になりすぎたんだろうか…普通に思ったことを心の中で呟く。
(明日来るの?とか会いたいって…あたしなに思ってるんだよ…。だめやん)
これが正直な気持ちだと気づいたあたしだけれど…なんだか受け入れられなくて否定をしてしまう。
それからも係長のことを考えては首を振って自分の気持ちを打ち壊そうとした。けれどそうすればするほど想いは増してさっきよりも考えが素直になる。
(早く仕事終わって。そしたら明日会えるかも…)
気がつけばこう思って仕事をしていた…。ーー
そして翌日。
出勤したあたしは先輩たちと話しながらちょこちょこ時計を見つめる。
(来るんかな…?崖崩れとか言ってたからやっぱり今日も休み…?)
そう思ってちょっとへこみがちに下を向く。すると。
先輩S『きたきた』
と1人の先輩がある場所を見ながら何やら言い、あたしはその場所をみた。
(あっ…)
すると事務室に係長の姿が見えた。
(来てるっ♪)
いつもの髪型、シンプルな洋服、表情…。
一気にあたしの心は弾み…それと同時に嬉しい気持ちに包まれる。
(ケガないみたいでよかった…)
事務室から出て作業場に向かう係長をチラ見してはそう思った。
リーダー『さぁ今日も頑張るぞ!めぐみちゃん』
あたし『はいっ!』
笑顔で返事をしたあとふとある場所を見ると係長と目が合った。
あたし『っ…!!』
1日置いて久しぶりに目が合ったため恥ずかしくなり…ついつい反らして違う方向を向いてしまった。
(かっこいい…)
内心そう想いながら作業を開始する。
それからしばらくするといつものように係長が近くを通ったり見てきたりした。けれどこのときはあのモヤモヤや痛みもなく、ただ嬉しい気持ちだけだった。
(係長きたから頑張れる…!)
こう思うと同時にある想いが溢れてきた。
(…あたし……もしかしたら係長すきかも…?)
1日会えなかったことで自分の気持ちに素直になり、まだハッキリとした気持ちは分からないけれどちょっとだけ気付いた気がした。
~続く~