という言葉が流行り出したのは、
彼が活躍し始めて数年たった、
2010年前後だったと思う。
日本球界を代表する投手から、
今や世界を代表する投手となった本家になぞらえて
身長が190cm近い大型高校生右腕が現れる度に、メディアはこぞってそう呼んだ。
ちなみに、現ソフトバンクホークスの武田翔太は、
宮崎日大時代、九州のダルビッシュと呼ばれ
春日部共栄出身の日ハム・中村勝は、埼玉のダルビッシュと呼ばれていた。
そして、2012年、二人のダルビッシュが、甲子園で火花を散らした。
「浪速のダルビッシュ」こと、
大阪桐蔭の藤浪晋太郎と、
「みちのくのダルビッシュ」こと、
岩手・花巻東の大谷翔平である。
両者とも、190cmを超える長身から、150km/hオーバーの豪速球を武器にした右腕。
それに加えて、二人とも天性の柔らかさも兼ね備えた、世代を代表する逸材だった。
2012年春の選抜甲子園で対戦した両者。
最終的に、春夏連覇を成し遂げることとなる大阪桐蔭の藤浪に、
軍配が上がった。
その偉業を引っさげてドラフト1位で阪神タイガースに入団。
高卒1年目ながら先発ローテーションを守り、10勝を上げた、藤浪晋太郎。
メジャーと日本球界との間に揺れたのち、日ハムに入団。
不可能と言われた、投手と打者の二刀流を成立させ、
高卒2年目ながら日ハムの、実質エースと、3番打者を兼務する超規格外、ミラクルボーイ大谷翔平。
彼らから「○○のダルビッシュ」という肩書きが外れるのに、そう時間はかからなかった。
既に彼らは、「藤浪晋太郎」であり、「大谷翔平」となり、
代名詞など必要としない、押しも押されぬスーパースターである。
その二人が、7月19日、
オールスターゲーム第二戦、
甲子園で再び相見えることになる。
大谷は162km/hという、もはや笑うしかない前人未到の球速で会場を沸かせ、
藤波は、150キロ中盤の速球とカットボールで、高卒2年目らしからぬ、貫禄の投球を披露した。
二人のダルビッシュは、若干20歳にして既に球界を代表する選手となっていた。
そんな二人を、
「大谷vs藤浪、甲子園で再び対決!」と
メディアはこのライバル対決を囃し立てる報道によって、オールスターという祭りを彩った。
だが、この二人は至って冷静だった。
ファンの夢想する二人のコラボレーションを実現すべく、
他リーグ、他チームの選手にも関わらず試合前にキャッチボール。
かと思えば、登板後のインタビューでは、
インタビュアーの意図をゆるりと交わし、
ライバル関係の構図を遠回しに否定した。
あくまで、一人の同い年の同志でしかない、と。
操り人形のごとく、ファンが求めるキャラクターを演じ、
かといって、メディアに迎合することなく、芯は絶対にぶれない。ぶらさない。
まだ成人式すら迎えていない二人をして、
この達観ぶりを、どう説明しよう。
末恐ろしさ、すら感じる。
二人のダルビッシュが、織り成すライバル物語。
もはや、球界を代表する二人のプレーは、一瞬たりとも目が話せない。
彼らの交点は、野球が持ち得るロマンの結晶なのである。
ただ、マリオネットを演じ、マウンドで躍動するハタチ以下の二人に踊らされているのは、
実は、メディア、ファン、そんな私たちなのかも、しれない。
その、末恐ろしいほどの強かさ、客観性、有る意味プレー以上に、刮目していかなければならないと思っている。

