死にゆく男たちは守るべき女たちに

と、「哀戦士」の歌詞をふと思い出したが、
本編には無論、何の関係もない

この映画の松たか子は
男の理想像のような女であるな

放蕩三昧の夫の仕打ちに耐え
愛人の前では
「あの人が恥ずかしい思いをするといけないから」と
自分が妻であることを隠し
ときに弱気を見せて頼る夫を励まし
それでいて朗らかに素直

方向性を間違えば
妄信的に夫に従うしかない
つまらない女に見えたかもしれないこの役柄を
松たか子は非常に上手に演じていた

素直である、
朗らかであるということが
神から与えられた才能であると信じられる

そんな、松たか子(が演じたさっちゃん)

男なら、誰もが松たか子(が演じたさっちゃん)に
惚れちゃうね、と思った

浅野忠信も素晴らしい情けなさであった

オレ大好きのナルシシズムと
自虐的な自尊心
そのなかでぽかっと表れる、
ぼっちゃん育ちならではの無邪気さ

重々しく
暗い映画にすることはできたろうが、
松たか子にも、浅野忠信にも
どこかのん気で滑稽な雰囲気が漂い、
やわらかな空気に満たされていた

原作を読んでみても
この方向性は間違っていないと思うが、
悲惨の中の軽妙さを表現するのは
とても難しいだろうから
本当にいいものを見せてもらった気がする


前に、前に進むことが苦しくなって
横道にそれて逃げることは情けないことだ
胸張って堂々といられるわけもない

でも、

「私たちは、生きていさえすればいいのよ」

と、さっちゃんは言った

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