何があれば
人は生きていけるのか、
わかった

希望だ

貧しくても
孤独でも
未来への希望さえあれば
人は生きていける

逆に希望がなければ
金や地位や名誉があっても
生きていく意味なんてない

スゲーことに気づいたぜ!
と思ったが、
そんなん聖書に書いてあるっつーの

キルケゴールの言葉も有名だっつーの
「死に至る病とは絶望のことである」ってね

ああ! それか!
と思わず、ノリツッコミ

言葉だけはずいぶん前から知っていたのに、
この歳になってようやく実感することができた

で、気づくきっかけになったのが
第135回直木賞を受賞した
『まほろ駅前 多田便利軒』

便利屋を営む多田のもとに突然現れた
高校時代の同級生、行天(ぎょうてん)。
不本意ながらも行天と共同生活を続けるうち、
固く閉ざされた多田の心は少しずつ和らぎ始め…

みたいな内容であるが、
便利屋として周囲のトラブルを解決する様は
多くの読者が指摘する通り
プチ『IWGP』のようだと言っていいだろう

単純に面白くはあるが、
これが直木賞ということには、正直驚いた

だって、これ、まんまBL小説だよ!?
いいのか、慎太郎!
と思ったが、石原慎太郎は芥川賞の審査員だった

ま、BLが直木賞受賞でもいいか
開かれた国、日本てことで

しかし、行天のセリフはエロい!
「ねぇ、俺の小指に触ってみな」
「こわがらずに触ってみなって」 だと!?
エロス!

高校時代、多田のせいで切断した小指を見せ
「たいしたことないから気にすんな」と
慰めるシーンなんだが、
これ絶対、狙って書いてるだろう、三浦しをん!
腐女子の面目躍如!

と、まあBL要素は置いといて、
この小説の主人公たちがスゴイ

現在も過去も未来も(©マチコ・ワタナベ)
夢も希望もなさそうな中年オッサンコンビが語るんだ、希望を

「(愛されなかったとしても)
まだだれかを愛するチャンスはある。
与えられなかったものを、
今度はちゃんと望んだ形で、
おまえは新しくだれかに与えることができるんだ」 とか

「だれかに必要とされるってことは、
だれかの希望になるってことだ」 とか


これを読んで思い出したのが
東野圭吾の『容疑者Xの献身』だ

元夫を殺してしまった隣人母娘を救うために
完全犯罪を計画する高校教師、石神。
彼の完全犯罪をガリレオが暴く!

といった内容なんだが、
石神の“献身”の理由に胸を打たれた


「死ぬことに理由などない。
ただ生きていく理由もないだけのことだ」と、
人生投げかかっていた彼の前に現れた希望――
それが隣人母娘の靖子と美里だった

「世界という座標に、靖子と美里という
二つの点が存在する。
彼にはそれが奇跡のように思えた」
「彼女たちは身に何の覚えもないだろう。
それでいい。
人は時に、健気に生きているだけで、
誰かを救っていることがある」

んなバカな! と言うなかれ
寂しき人々は時に、
ささやかな光に温もりを感じてしまうものなのだ

とはいえ、
『まほろ駅前~』も『容疑者X~』も
現実世界には稀有なおとぎ話なんだろう

それでもいい

世界に希望の種さえあれば
人は生きていけるのだから




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