ワープロ専用機と言われた家電は、日本と日本語圏だけに普及した計算機だ。Windowsと廉価PCの牙城に破れさったの見方より、PCの性能が日本語処理に十分対応できるようになったから統合したと思える。



 《漢字文化圏》と称される中国・韓国では一般的にそれよりPCにより言語処理が行われていたようだ。中国では日本のメーカーが輸出用にシャープ書院を元に中国語化した製品が存在した。Yahoo!オークションで出品されていたくらいだ。同じくカシオワードを中国語化した製品も出品されていた。自国でそれを生産して売っていたかは資料がないので不明だ。
 韓国も地元電気メーカー(社名失念)が専用機を出していた。これも同じくYahoo!オークションででの出品。詳細は不明である。



 登場する《シャープ中国語ワードプロセッサ WL-1000》は、以前登場したシャープ書院WD-300と外観が似ている。まず、それぞれを見比べてみよう。



(写真)SHARP WD-300




(写真)SHARP WL-1000



  日本向けに発売された製品。単一乾電池4本それにAC/DCアダプタで駆動する。これを前の所有者から安価で譲り受けたとき、説明書とカタログもついていた。カタログは折り目、破れがあるが、ほとんど残っていないと思われるので、スキャンさせたのを掲載する。




【表面】




【裏面】






   カタログにあるペンで書いた文字は電器店との交渉したあとのようだ。カタログ作成は昭和63年12月。お買い上げ年月日が平成元年5月1日となっている。
 販売価格198,000円。中国人、中国語を理解する人が使う特殊用途のワープロなので、高めの設定だと判断できる。
 中国語ワープロ専用機は、この時代、メーカー名を失念したが《仲字》と文字が入った製品があった。NHK中国語講座テキストの広告欄にあったのを記憶している。この機種は繁体字(旧字体)専用ワープロであった。



 WL-1000も同じテキストの広告欄にあった。こちらは大陸で使われている簡体字、中国の当時の規格GB2312準拠(日本で言うJIS漢字コード。平成22年現在の規格はGB18030-2005)である。書体はカタログによれば《宋体24ドットフォントとなっている。



 入力方式は、かな漢字変換のような、ピンイン(中国語発音アルファベット)漢字変換。ピンインには声調記号を加えて表記するが、このワープロはそれは考えずに発音のローマ字を入れて変換キーを押して漢字にする。その他、漢字コード入力、キーボードに刻印されたよく使う漢字での入力がある。

 

キーボード、ディスプレイ表示はすべて中国語。WD-300もしくはこの時代のポータブル書院をつかった人にはキーレイアウトがほぼ一緒であり、かつ、ワープロソフトも書院を単に中国語化しただけの設計なので説明書がなくてもある程度使いこなせる。



 保存は2DDタイプのFDに保存する。ダイレクトドライブのようなので今でも読み書きができる。これからは英語の他にも中国語も知っておけば、とかくお騒がせな中国人・中国政府・それに企業が何を考えているか手に取るようにわかる。使いこなして言葉を覚えようかと考えている。