今回は岐阜県高山市に本店を構える飛騨信用組合の秀逸な取組みを紹介する。

筆者が「ひだしん」に注目した理由は二つある。一つは二年余り前にクラウドファンディング(以下、CF)大手のミュージックセキュリティーズ(以下、MS社)の提携金融機関一覧に飛騨信用組合の名前を目にしたことである。今でこそ、CFの取扱いが拡大しているが、当時、MS社と業務提携していたのは全国で僅か24。地銀・信金が並ぶ中で「ひだしん」は信組業界唯一であった。チャレンジしている信組がある。そんな印象を強く持った。

そして、二つ目はネットで検索した同信組のホームページの片隅に本店の一部施設を地域活性化と文化振興応援のため開放するとの告知を見つけたことである。

 

新たな価値を

 施設の開放については、信金業界においても有償、無償でホール、会議室、研修施設を取引先などに利用いただいている例はある。しかし、ホームページなどで施設の利用を告知している例はない。依頼を受けてしまったら個別に検討する。そんな姿勢である。なぜ受身になっているのか。それは地域や顧客の利便性より、「もしマル暴だったら」、「もし営利目的だったら」、「不動産賃貸業ではない」など、リスク管理や自らの都合を優先しているからである。「ひだしん」では本店新築を契機に規約を明示した上で利用可能なスケジュールまで公開している。些細なことではあるが、自らの資産を地域のために活用し新たな価値を提供する。そんな姿勢が垣間見える。

 

三つのファンド

 MS社との提携は、近隣地銀の成功事例を業界誌で知った「ひだしん」がMS社に働きかけた成果である。地域のために新たな手法に果敢にチャレンジする「決断力」と「柔軟性」は称賛に値する。

「ひだしん」ではMS社のCFをすでに4件成約している。それとは別に一昨年8月に地域企業と地域投資家を結びつける小口の地域特化型CF、「FAAVO飛騨・高山」を立ち上げ14件成約させている。更に加えて、昨年2月に「ひだしん」が主体となった地域活性化ファンド、「飛騨高山さるぼぼ結ファンド」を設立。すでに4件の投資を実現している。(計数はすべて平成27年度時点)地銀を含め短期間にこれだけの実績を上げている金融機関は稀である。

 

 今回は「ひだしん」の二つの取組みにフォーカスした。来月号では、この取組みの延長戦線上に広がるユニークな取組みを紹介する。

 

ひだしん 本店

ひだしん 本店2F 融資

支店には ペッパーも