今月号もテーマはESである。昨今、新聞、TVなどでブラック企業と言う言葉が使われる。ブラック企業を端的に表現すれば劣悪な環境下で従業員に労働を強いる企業となる。金融機関はコーポレートガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令順守)を重視しており、ブラック企業とは無縁の業態と理解しているが、それではブラック企業の対義語となる「ホワイト企業」とはどんな組織であろうか。

ホワイト企業
 経済産業省監修のホワイト企業・女性が本当に安心して働ける会社(文藝春秋)に就活生、働く女性にむけて、女性の視点から見た<「ホワイト企業」はこんな会社です!>が紹介されている。
「残業」原則禁止。夜8時にオフィス消灯
「恋愛」激務が原因で破局しない
「結婚」家族一緒に暮せるよう勤務地を配慮
「出産」遠慮なく産めて査定も下がらない
「育児」在宅勤務OKなので両立できる
「仕事」女性パワーによるヒット商品がある
「男性」イクメンになるよう奨励

専業主婦は3.5%
 上記の項目を見て、信組、信金は「残業」「恋愛」「結婚」まではある程度クリアーしているが、「出産」「育児」「仕事」「男性」の項目はもっと改善できると感じた方が大半ではないか。同書では、一世帯当たりの所得がここ10年間で100万円以上も少なくなっており、結婚適齢期の独身男性で、一家を支える年収、例えば600万円以上の人(専業主婦を養える人)は首都圏でも3.5%程度。「宝くじに当たるようなもの」として女性の経済的自立も説いている。

活用・活躍・輝く
信金の総職員に占める女性職員の割合は35%前後(但し、開示しているのは正職員数であり実態から乖離している)で推移しており、信組の比率も同程度と推測される。過日、「保育園落ちた・・」の匿名ブログが反響を呼び、保育、育児の問題がマスコミで大きく取り上げられた。匿名ブログに関して女性識者がテレビで「保育・育児が働くママの問題として取り上げられてショックを受けた、これはママの問題ではなく日本のパパ・家族、日本の社会的問題である」との主旨の発言をされ、その正論に絶句した。
日本の労働力率<15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合>は先進国のなかで決して低い訳ではないが、総人口がピークから約100万人減少するなかで、すでに生産年齢人口(15~64才)は約1000万人減少している。労働力率は横ばいでも母数である労働力人口が激減している。そんななか、女性の年齢階級別労働力率のM字カーブ(出産・育児世代の女性の労働力率が前後の世代に比べ極端に落ち込む状況)の解消・改善が重い課題となっている。
女性の「活用」から「活躍」に、そして今では女性が「輝く」社会へ。キャッチフレーズの変化は危機感の裏返しであるが、社会や組織はフレーズの変化に追いつけない。

誇りの持てる組織に
 意識と意欲の高い職員無くしてはES・CSは語れないと分かっていても、諸課題解決の理想と現実のギャップを直ちに埋めることは難しい。それはすべての組織に当てはまる。
要は職員が「ここで働けてよかったと思える組織」、「誇りを持てる組織」になることである。組織が改革への強い意識と意欲を持っていることを示し、一つひとつ着実に進める時ではないか。