先月号に続き、テーマはクラウドファンディングである。今回は音楽ファンドを業務としていた、ミュージックセキュリティーズ株式会社(以下、MS社)が音楽以外の事業ファンドに業務を拡大するきっかけとなった神亀酒造株式会社(代表取締役 小川原良征氏 本社、埼玉県蓮田市 以下、神亀酒造)のケースを紹介する。
全量純米蔵
神亀酒造は嘉永元年(1848年)創業。同社は、アルコール添加で味を調整することのない米だけの酒、本来の日本酒を目指して、昭和62年に仕込む酒のすべてを純米酒に転換。戦後初の全量純米蔵となっている。また、同じ志を持つ日本各地の21の蔵と「全量純米蔵を目指す会」(以下、目指す会)を結成、同社社長が代表幹事を務めている。
仕組みに共感
純米酒は良い米を買い、丁寧な手仕事を重ね、3年以上熟成させる。3年後に売れてはじめて資金が回収できる。純米蔵には潤沢な資金が必要だ。
2007年に日本開発銀行からMS社のファンドを紹介された。当時は、MS社やファンドに対する理解もなく、資金的な問題もなかったが、「経営者や事業を応援したい。そんな、投資家(お客様)から小口多数の資金を集める」そんな仕組みに心を惹かれ、MS社の事業ファンド第1号として純米酒ファンドを立ち上げた。神亀酒造のファンドが順調に立ち上がったことを受け、目指す会のなかにファンド利用の機運が生まれ、これまでに目指す会関連のファンドが30近く組成されている。
ファンドの効用
(1)指す会のある蔵は、金融機関から長期資金を調達することが困難で、事業継続の危機に直面していたが、2008年からファンドをスタート。その後、投資家の支持を得て毎年調達額を増やし、様々な熟成酒の事業展開に結びつけた。
(2)MS社ではファンドの事業者からの要望を受け、同社のHPに通販の機能を整え、投資家などに商品を販売する場を提供している。地方の事業者からは、ファンドを利用したことで「巨大なマーケットである東京との接点ができた」、「販路が広がった」との声が上がっている。
(3)事業者が恩恵を受けているのは資金や販路だけではない。ファンド立ち上げ時に行う事業説明会や蔵の見学会・試飲会で、投資家(お客様)の声を直に聴けることも新鮮だ。試飲会で投資家に「どうぞ、お試しください」と声をかけたところ、「下戸なんです。でも高い値で酒米を買って日本の農業を支えてくれる。そんな視点で応援します」その言葉を聴いて、「嬉しかった。純米酒に取り組んで良かった」と小川原社長は語った。
MS社のクラウドファンディングは資金供給だけでなく、販路拡大の機能を持ち、経営者のモチベーションまで高めている。地域金融機関が顧客支援を進める上で学ぶべき点は多い。
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神亀酒造 社長 小川原良征氏
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神亀酒造の純米酒 「神亀」と「ひこ孫」
全量純米蔵
神亀酒造は嘉永元年(1848年)創業。同社は、アルコール添加で味を調整することのない米だけの酒、本来の日本酒を目指して、昭和62年に仕込む酒のすべてを純米酒に転換。戦後初の全量純米蔵となっている。また、同じ志を持つ日本各地の21の蔵と「全量純米蔵を目指す会」(以下、目指す会)を結成、同社社長が代表幹事を務めている。
仕組みに共感
純米酒は良い米を買い、丁寧な手仕事を重ね、3年以上熟成させる。3年後に売れてはじめて資金が回収できる。純米蔵には潤沢な資金が必要だ。
2007年に日本開発銀行からMS社のファンドを紹介された。当時は、MS社やファンドに対する理解もなく、資金的な問題もなかったが、「経営者や事業を応援したい。そんな、投資家(お客様)から小口多数の資金を集める」そんな仕組みに心を惹かれ、MS社の事業ファンド第1号として純米酒ファンドを立ち上げた。神亀酒造のファンドが順調に立ち上がったことを受け、目指す会のなかにファンド利用の機運が生まれ、これまでに目指す会関連のファンドが30近く組成されている。
ファンドの効用
(1)指す会のある蔵は、金融機関から長期資金を調達することが困難で、事業継続の危機に直面していたが、2008年からファンドをスタート。その後、投資家の支持を得て毎年調達額を増やし、様々な熟成酒の事業展開に結びつけた。
(2)MS社ではファンドの事業者からの要望を受け、同社のHPに通販の機能を整え、投資家などに商品を販売する場を提供している。地方の事業者からは、ファンドを利用したことで「巨大なマーケットである東京との接点ができた」、「販路が広がった」との声が上がっている。
(3)事業者が恩恵を受けているのは資金や販路だけではない。ファンド立ち上げ時に行う事業説明会や蔵の見学会・試飲会で、投資家(お客様)の声を直に聴けることも新鮮だ。試飲会で投資家に「どうぞ、お試しください」と声をかけたところ、「下戸なんです。でも高い値で酒米を買って日本の農業を支えてくれる。そんな視点で応援します」その言葉を聴いて、「嬉しかった。純米酒に取り組んで良かった」と小川原社長は語った。
MS社のクラウドファンディングは資金供給だけでなく、販路拡大の機能を持ち、経営者のモチベーションまで高めている。地域金融機関が顧客支援を進める上で学ぶべき点は多い。
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神亀酒造 社長 小川原良征氏
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神亀酒造の純米酒 「神亀」と「ひこ孫」