~アクティブレストについて~

今回のコラムは“アクティブレスト(以下,A-rest)”についてご紹介させて頂きます。

A-restは“アクティブリカバリー”とも呼ばれており,徐々にこの単語も広く周知されてきてはいるものの,まだあまり馴染みのない単語ではないでしょうか?

これは,『積極的休養』と直訳することでき,端的な意味としては身体を“敢えて”積極的に動かし,能動的に疲労回復を図る手段を指します。

以下,具体的な考え方や実際の導入方法,諸注意事項について詳述していきますので,是非最後までお読み頂ければと思います。

A-restとは?

冒頭の繰り返しとなりますが,“A-rest”とは『積極的休養』を示し,疲労回復をより効率的に図る場合は,『完全休養』よりも“敢えて”積極的に身体を動かす事で,能動的に疲労回復への働きかけを行う手段を言います。一般的に,疲労が溜まっている時こそ『完全休養』の方が効果的ではないか…と考えがちですが,A-restはその正反対の発想を持ち,スポーツ選手にとっては明らかに疲労回復が早く,メリットは大きいと考えられています。

 前回のコラム“クーリングダウンについて”でも,激しい運動の直後に突然運動を中断する事無く,ゆっくりしたペースでのジョギングから始め,酷使した筋肉へのストレッチ或いはアイシング等を順次行う事で,可及的早期の疲労回復を図りましょう!と記載させて頂きましたが,当一連行為も効果的なA-restとして位置づけられます。“クーリングダウン”も“A-rest”も共通して,“主運動と同じ運動を軽めに行う”という事が一般的な考え方であり,『脚部を多用するスポーツ=軽めのジョギング等』或いは『腕部を多用するスポーツ=軽めのキャッチボール等』という事になります。これらを踏まえ,『練習後』だけでなく,『試合間』や『試合翌日』にもA-restを有効取り入れていく事が望ましいです。

試合間にも取り入れよう!

各種スポーツ大会において,一日に複数のレースや試合を行う場合があります。特に,陸上競技やテニス等の個人競技にその例が多く,次の試合に極力“疲労を残さない”という事が重要となり,その場合は試合と試合の間の過ごし方が大事になってくる事は言うまでもないと思います。従って,第一試合を終えた後,第二試合までの間完全に身体を止めてしまうのでは無く,『主運動と同じ運動を軽めに行う』や『ストレッチを行う』等を取り入れ,可能な限りフレッシュな状態で次の試合に臨めるよう工夫しましょう!

試合翌日の過ごし方も重要!

『練習後』や『試合間』におけるA-restについて上述してきましたが,実はA-restが最も注目される場面は『試合翌日』なのです。元来,日曜日の試合を終えて翌週の日曜日に2回戦が控えている場合,その翌日の月曜日はチームとして“オフ”を取る場合がほとんどでした。しかし近年では,試合翌日に完全休養ではなく,チーム練習としてA-restを取り入れ,翌週の試合を限りなくフレッシュな状態で臨めるような考え方へ変化してきています。実際に,選手自身も『疲れが取れる』ことを実感し,A-rest即効性も有していると言われています。従って,短期的な各種競技大会において,試合翌日のA-restの導入は大変効果的であると考えられています。

A-rest実施における注意点!

A-restとは言っても,ただ“闇雲に動けば良い”という事ではありません。誤った捉え方をした場合,逆にさらなる疲労を招いてしまう可能性もあります。従って,“どのような運動”を“どのくらいの強度”で行えば良いか?が重要なポイントとなってきます。

まず大事なことは“疲労回復を図る”という事です。前回のコラムでも記載したように,血中や筋肉内に疲労物質が貯留した結果,疲労を感じる上,筋の柔軟性低下等の諸問題を惹起します。従って,まずは“有酸素運動”を取り入れ,全身の血液循環を向上させると共に,取り込んだ酸素が血中や筋内における疲労物質の除去を促進します。ここで重要なポイントは“強度”です。高強度で行った場合は,かえって更なる疲労を招くため,主観的に『楽~ややきつい』程度の強度としましょう。専門的には“カルボーネン法”に基づいて心拍数を算出し,運動強度を規定していく手段もありますが,導入の簡便性も考慮し,まずは自身の主観的な感覚を大事にしましょう。さらに“時間”も重要なポイントとなります。この“時間”については諸説ありますが,『20分~40分間』がリカバリー期において“至適時間”と考えられています。これらのポイントに留意して“有酸素運動”を行った後,酷使した各部位の軽運動,或いはストレッチ等の各種競技特性に応じた動作を取り入れていきましょう。

 さて,今回も最後までお読み頂きありがとうございました。

今回は,未だあまりの馴染みのない“アクティブレスト(A-rest)”を取り上げ,前回の“クーリングダウン”の延長として,より効果的・効率的に疲労回復を図る手段について書かせて頂きました。個人的に,“ウォーミングアップ”に比べ“クーリングダウン”については軽視されがちかな?という印象を持っています。しかし,“A-rest”を含め入念な“クーリングダウン”を行う事も,障害予防やパフォーマンスアップに繋がるのです!

当コラムが“A-rest”を含めたクーリングダウンを見直す・考え直すキッカケになる事を願っています!―『全ては成長期におけるスポーツ障害を未然に防ぐために…




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