「自己分析」って!? | コミュニケーションの学校 回覧板(錦糸町&両国&浦和)

「自己分析」って!?

久しぶりに就職活動についてのお話。

就職活動を始めると、いきなり「自分とは何か」という
壮大な問いにぶち当たります。そう、いきなり。
出合いは、いつも、突然に、です。

結論から言えば、この問いに明確な結論なんて出るはずがなく、
個人的には「一生をかけて探し続けるもの」と考えています。
だから、本気で答えを探せば、自己崩壊するでしょう。
ようこそ!鬱&無気力の世界へ、みたいな。

個性は、あくまで相対性の中からしか見いだせません。
たとえば「サッカーが上手い人」と言えども、
サッカーの強豪国にいけば「下手な人」に早変わりです。
「明るい人」だって、「暗い人」だって、
すべては周囲との関係性の中から相対的に導かれるものです。

だから、自己の中に、自分を見出そうとしている限り、
絶対に確実に100%答えの手がかりすら見つかりません。

こうした「自己分析」のトリックから、
就職講座には自己啓発セミナーの類(たぐい)が少なくない。
あるいは、宗教やスピリチュアルが入り込む余地も大きい。
完全なるオリジナリティの個性を求めるなら、
絶対なるもの=神、前世、運命、超体験(自己啓発中に得られる
圧倒的な感動体験)などが必要ですからね。

そもそも、自分って、何なのでしょう。

タンパク質の塊?
いやいや、どうやら、「情報の集まり」のようだぞ、と。

少し見方を変えてみましょう。

日本人とは何か。民族とは何か。

■知恵蔵さんより拝借
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【民族】
文化、言語、生活様式などの特定の要素を絆(きずな)として共有し、「われわれ」という意識を持った人間集団
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おお、「民族」なんて自己アイデンティティの根幹をなす
言葉なのに、すでに定義から何言っているかわからないぞ(笑)

>『「われわれ」という意識を持った』
この点から判明するのは、「日本人(われわれ)と思っているから、
日本人(われわれ)である』ということでしょうかね。ははっ。

■精神分析学者・岸田秀教授の著書より拝借
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民族という幻想は、要するに、歴史(祖先が同じだとか、かつてわれわれを守るために身を捧げた偉大な英雄がいたとか、悲惨な事件をみんなが共通に体験したとか)、文化(人間とはこういうものだとか、こういう場合はみんなこうするとか)、宗教、言語などを共有しているという物語に支えられている。もちろん、同じ民族であるためにこれらの要因をすべて共有している必要は必ずしもないし、また、そのうちにどれかを共有していても必ずしも同じ民族であるとは限らないが、民族は幻想であだけに、何らかの形である種の物語に支えられていないと、たちまち崩壊する。
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非常に重要なことが書かれていると思います。
民族は、幻想であり、幻想を支えているのは物語(ストーリー)だと。

乱暴ですが、これを「自己」に置き換えてみたら、
自己は、幻想であり、自己を支えているのは物語(ストーリー)です。

過去、友達とケンカして傷ついた自分も、
現在、毎日バイトに追われている自分も、
未来、将来建築家を目指している自分も、

あらゆるストーリーの断片がまるっと集まって「自分」。
そうとは言えないでしょうか。言えます、言えますよね。

だから、今後、いろいろなストーリーと出合うたびに
「自分」は変わり続けるし、それは死ぬまで終わることはない。

蛇足ですが、もう一つ、
ストーリーの解釈を変えるだけでも「自分」は変わります。

「あの時、失敗して、自信を失い内気になった」

そんなストーリーを、

「あの時、失敗して、だからこそ乗り越えるために頑張りたい」

というストーリーに変えた瞬間、あなたは変わります。

だから、そうです、そうなんです、この世に生まれたときから
その人のストーリーは始まっているわけで、
どんな経験も、どんな日常のワンシーンも、その一つひとつが
かけがえのない「あなた」を形づくり、しかも刻々と変化している
のですから、「自分さがし」なんて、ああ、とてもナンセンス。

「あなたは何者か」
面接で、誠実に、本気で、間違いないように答えようとして、
すべてのストーリーを語らないと伝わらない気がして、
断片だけ語ったところで自分を理解してもらえるはずがない、
と、ふと思ってしまったら、永遠に消化不良感は否めません。

長くなりましたが、要は、何が言いたいのかといえば、
「自己分析はほどほどに。ハマると永遠ですよ」と言いたい(笑)

☓「自己分析なんて意味ないから、やる必要ない」
◎「肩の力を抜いて、ストーリー発見を楽しもう!」
☓「自分にとって完璧にベストなストーリーはどれだ!?」

ここで、テクニック編。

面接で求められている自己PRは、こうと考えられますね。
(1)ストーリーが大切
(2)必要なストーリーだけ語ればよい

(1)は、ただ「建築家になりたい」というよりも、
「カクカクシカジカで建築家に興味を持ち、建築家になれるよう
アレヤコレヤを経験し、さらに仕事の面白さや厳しさに触れ、
それでもなお、建築家を目指したい。しかも、こういう建築家ではなく、
このような建築家を目指したい」という実体験ストーリーが強力です。

(2)は、良いストーリーをいくつか用意して、
それだけ語ればいいんじゃないかと思います。
良いストーリーは、「あなた自身にとって」ではないですよ、
あくまで他人が聞いて良いストーリーです。
これは誰かに聞いてもらわないとジャッジできないでしょうね。

「いや、そんな経験しないまま、就職活動突入したし」という方。
なるほど、てか、そうですよね。それでもストーリーは作れるはず。

【例1】
「学生時代は学業に専念していました。学業ではこれだけのものを
成し遂げました。自分は目の前のことに一生懸命に取り組むタチなので
就職活動が始まってから仕事に興味をもつようになりました。
だから、貴社の仕事もまだ興味段階のものでしかないと思います。
でも最初は興味段階でも、学業を通じて、学ぶほどその奥深さを
知りました。仕事もきっとそうだと思います。自分は、きっと最後まで
やり遂げると確信しています。チャンスをいただければ幸いです。

【例2】
「正直、就職活動が始まってから、人生や仕事について真剣に考える
ようになりました。なぜこれまで考えなかったのか、少し後悔もありますが、
今は取り返すために他人の3倍頑張るしかないと思っています。
最近、恩師のススメから語学学習を始めました。日本の人口構造的に
私たちの世代は語学が必須になると聞きました。また、いまの自分に
甘えが見えるなら、どうぞ遠慮なくご指摘いただければ嬉しいです。
まだ自分には何ができるのか、世の中がどう変わっていくのか、
わからないことだらけですが、今は社会に出て、目の前の仕事に没頭し、
その中で少しずつ見つけていくしかないと考えています。
今の自分にあるのは覚悟のみです。貴社に損はさせません。

・・・って、感じでしょうかねー。
人間それぞれなので、響かない人事もいるでしょうから、
このまま伝えてダメだったとしても責任は取りません(笑)。
だって、空想の世界の例文だしぃー。


ー私たちはリアルに存在しながらも、
 その存在はあやふやな幻想に支えられているー

この一点をお互いに知るだけでも、
コミュニケーションはラクになりそうですよね。

幻想に本気になってムカムカしても意味ないわけですし。



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