年寄りを養えない社会
昔々、60歳以上の年寄りは山に捨てなければならない、
そんな風習を持つ村がありました。
母が60歳になった翌日、ある男は母を背負い山に登り
はじめました。すると、親が道中で白い花を摘み、道
にパラパラと撒いています。男は「なにか、気をまぎ
らわしているのだろう」と思い、「すまない、これは
決まりなんだ」と母に言いました。
しかし、母親は木の根などを食べて生きながらえない
ように歯を壊されているため話せません。ただ悲しそ
うな目をするだけでした。
山のずっと奥で、親を降ろし、最後のお別れのときが
きました。「すまない」と何度も謝る男に、母親は早
く帰りな、と手まねします。男は後ろを振り返ること
なく、足早に来た道を戻りはじめました。
しかし、知らない土地で真っ暗になってしまい、男は
迷子になってしまいました。そのとき、ふと白いもの
が見えました。母親のまいた白い花です。
男はそのとき初めてわかりました。母は息子が迷わな
いようにと花をまいていたのだと。男は、さめざめと
泣き崩れました―。完。
そんな風習を持つ村がありました。
母が60歳になった翌日、ある男は母を背負い山に登り
はじめました。すると、親が道中で白い花を摘み、道
にパラパラと撒いています。男は「なにか、気をまぎ
らわしているのだろう」と思い、「すまない、これは
決まりなんだ」と母に言いました。
しかし、母親は木の根などを食べて生きながらえない
ように歯を壊されているため話せません。ただ悲しそ
うな目をするだけでした。
山のずっと奥で、親を降ろし、最後のお別れのときが
きました。「すまない」と何度も謝る男に、母親は早
く帰りな、と手まねします。男は後ろを振り返ること
なく、足早に来た道を戻りはじめました。
しかし、知らない土地で真っ暗になってしまい、男は
迷子になってしまいました。そのとき、ふと白いもの
が見えました。母親のまいた白い花です。
男はそのとき初めてわかりました。母は息子が迷わな
いようにと花をまいていたのだと。男は、さめざめと
泣き崩れました―。完。