右脳コミュニケーションと左脳コミュニケーション | コミュニケーションの学校 回覧板(錦糸町&両国&浦和)

右脳コミュニケーションと左脳コミュニケーション

~広告制作の現場で得たノウハウをこっそり公開しちゃいます~


●右脳コミュニケーションと左脳コミュニケーション

コンセプトの骨組みであるターゲットとベネフィットが確定したら、次に広告表現を考えていきます。ここからは本当に人それぞれ、というか、制作者の技(ワザ)です。

とはいっても、表現方法には、大きく2つのパターンがあります。「損得」に訴えかける左脳のコミュニケーションと、「好き嫌い」に訴えかける右脳のコミュニケーションです。前者は、「脅し」が多いですね。例えば、「これを買うとこんなにお得だよ」という訴求は、裏を返せば、「現在のあなたはこんなに損をしてますよ」ということを暗に訴えかけているわけです。現代人は損得勘定で生きている人が多いので、まぁ、効く、効く。しかも前回述べた「ベネフィット」をストレートに打ち出して、ベネフィットに忠実な表現が多いですね。

一方、今回クローズアップしたいのは、後者の右脳のコミュニケーションです。このコミュニケーションのすごいところは、ベネフィットを超越するところでしょう(笑)。好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。この好き嫌いの感情は、長所/短所、損/得、利/害の枠組みを超え、非常にパワフルな訴求を生みます。

例えば、1991年よりはじまったNECさんの広告「バザールでござーる」というTVCFをご存知でしょうか?このTVCFでは、かわいいおサルさんが「バザールでござーる」を連呼するのみ。肝心のNECの商品説明など一切ありません。でも、放映された当時、商品はめちゃくちゃ売れました。なぜなら、パソコンのスペックなんてややこしいことを言われるよりも(むしろ消費者は、どのパソコンも大差がないと気づいています)、キャラクターのサルがかわいければ、それでよかったのです。これが「かわいい」を用いた、すなわち「感情重視」である右脳のコミュニケーションの一例です。

ある意味、ロジックを超えた、とても人間らしい(むしろ動物らしい?)、それでいて非常にパワフルな右脳のコミュニケーション。多くのコピーライターは、この神の領域に憧れ、目指します。しかし、この領域の表現は、制作者の「感性」「熟練の技(ワザ)」「人間力」が肝となりますので、中途半端なチカラしかないのにやってしまうと大失敗します。一見それっぽい表現ですが、まったく意味不明な“クソ”みたいな作品、あるいは逆に「嫌い」な感情を刺激するような作品として終わってしまうこともある諸刃の剣でございます。事実、神の域に到達できず、失墜して“クソ”に堕ちた作品が世にあふれています。それを「応援すべきチャレンジ精神の賜物」と見るのか、「単なる広告フィー泥棒」と見るのか、は評価が分かれるところでしょう。