高槻の摂津峡界隈へは車で1時間近くかかるにも関わらず、学生時代から妙な縁が続いていて、さまざまな事情(友人宅訪問、バーベキュー、温泉、レストラン、墓参り等)により、おそらく大阪の梅田や心斎橋よりも足繁く通っているのである。特に自然が織り成す美しさに触れながら料理に舌鼓を打ち、温泉に身を浸すにはとてもいい場所で、思い出もまた数多い。
その高槻の森の中に、ひっそりと佇むのがこのレストランである。
晴れ間の間に青々とした緑の森に囲まれたログハウスのようなレストランは、その光と緑と茶色のコントラストを見事に輝かせて我々を迎えてくれていた。迷うことなく建物を一周する。水気を十分に吸って生き生きしている草木を眺めながら、その空気を深呼吸してみた。「いいねえ、こんなところに住みたいねえ」と、最近の我々夫婦の常套句を交わし、木々の向こうを流れる川音に耳を澄ませ、木洩れ日に目を細めてみた。体も心も芯から喜んでいるのよく分かる。そうして、ここを訪れる人の多くがするであろう、そんな下ごしらえ済ませてから、いよいよレストランの中に足を踏み入れた。実はこの日、朝晴れ渡った空を見て、どこか緑の美しい場所でランチを食べたいと、このキッチンスヌーグを思い立ったのであった。相変わらず思いつきの日々ではあるが、予約が簡単に取れたのは至極幸運だったと言わざるを得ない。
結婚式や披露宴も開かれるこの名店は、わずか5つのテーブルを広いダイニングルームの壁際に配置するのみで、レストランというよりはむしろ、教会のような荘厳さを感じさせる空間である。時期によっては予約も取りにくく、この日も建物の入り口には「本日のランチは満席です」の張り紙が、ごくごく当たり前のように飾られていた。さて、手の込んだ美しくも、美味しいランチは夫婦共々とても感動を覚えるものだった。これだけの舞台を設えて、まさか美味しくないわけはないだろうとも思うのだが、どうしたって「うまい」「美味しい」を連発してしまうのである。そんな非日常空間でうまい料理を堪能し、例によって妻は白ワインをニコニコと味わい、コーヒーで舌を洗って会話に花を咲かせれば自然と時は過ぎていく。非日常とは時間を忘れさせるものである。よって、我々夫婦は度々時計を見ては愕然とし、半ばあわてて店を飛び出して車を飛ばさなければならなくなる。なんせ、娘を乗せた幼稚園バスは、我々のそんな事情は知らぬとばかりに、刻々とバス停へと近づいているからである。


