・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第124号 2020年8月
・お米にも広がるプラスチック汚染
理事 水野玲子
私たちが住む世界は今日、海も空気も、土壌も水もプラスチックまみれです。それでは、主食の米はどうでしょうか。
米から検出されたプラスチックの添加物
2010年鹿児島大学の林國興名誉教授は、日本の米が環境ホルモンとしてよく知られているプラスチック可塑剤のフタル酸エステルのジエチルフタレート(DEP)や非イオン界面活性剤のノニルフェノール(NP)などに汚染されていると発表しました*1。
両物質とも強い環境ホルモン作用があり、オスのメス化などが指摘されています。
同教授は、有機農法で作られた米に比べ、とくに慣行農法(農薬や化学肥料を使用する従来の農法)で作った米がプラスチックの添加物に汚染されており、毎日食べると精子数減少の可能性すらあると警告を発しました。
それでは、どうして米がプラスチックの添加物に汚染されるのでしょうか。
同教授は、農業用ビニールハウスからプラスチックの添加物が雨で流され、土を汚染したのではないかと疑いましたが、原因はそうではなさそうです。
米の「一発除草剤」今日の慣行農法
最近数十年間で、化学肥料や除草剤などの農薬製剤をプラスチックで包む技術が広がっています。農薬製剤をコーティングしていたプラスチックが河川や海にゴミとして溜まっている写真を見たことがある人も多いでしょう。
近年、高齢化した農家の労力削減をめざす技術開発が進んでいます。慣行農法の稲作では、苗を育てる育苗箱への粒剤(殺虫剤など)散布と、水田への除草剤散布が一般的です。
除草剤については、「水田投げ込み剤(ジャンボ剤・パック剤)」が一発除草剤とよばれ、田んぼの畔からポイっと投げ入れるだけで除草が済むので、幅広く利用されています。
水田投げ込み剤は、粒剤あるいは錠剤を水溶性フィルムで分包し、10a あたり5~20パックの割合で水田に投げ込む製品や、投入30秒後、パックから粒剤が拡散しはじめ、1.5分後には勢いよく周囲に拡散し、3分後には終了する仕組みの製品などがあります。
そして、その便利さを可能にしたのが水溶性フィルムをはじめとするプラスチック類です。
例えば、農薬の包材には、ポリビニルアルコール(PVA)*3などのフィルム、粒剤を水面に浮かせる浮力剤には、ポリアクリル酸ナトリウムなどのプラスチックでできた造膜・水溶性ポリマー(高分子)が用いられています。
また、水中に均一に拡散させる分散材や、成分を徐放するための各種ワックスにもポリマー(高分子)が使われています(表)。
一発除草剤を包むフィルムは、プラスチックといっても水溶性なので、水田内で溶けて問題ないとされています。
しかし、米にプラスチックの可塑剤や界面活性剤などの添加物が蓄積していることが実際に明らかになったのです。
私たちは、主食の米がプラスチックとその添加物で汚染されている現状について、問題提起とともに、急ぎ対策を議論する必要があるのではないでしょうか。