・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・ニュースレター第116号
・広がるマイクロカプセルの用途 ―もうひとつのマイクロプラスチック汚染問題
理事 水野玲子
マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的に大問題となっています。
マイクロプラスチック汚染の原因にはいろいろありますが、そのひとつである肌の古くなった角質や汚れを除去するスクラブ洗顔料や化粧品に使われるマイクロビーズについては、すでに使用自粛が始まっています。
一方、意外と知られていないのがマイクロカプセルの問題です。
マイクロカプセル(直径数マイクロメートル~数ミリメートル)は、プラスチック製のカプセルの中に香料や農薬、食品添加物や薬などを封じこめ、必要な時にカプセルがはじけて中身が出る仕組みとなっています。
カプセルの壁剤(膜剤ともいう)には、さまざまな種類のプラスチック(合成樹脂)が使われています。
マイクロカプセルの多様な用途
近年ますますマイクロカプセルの用途が広がっています(図表1)。
たとえば医薬品のマイクロカプセル化は、医薬品の劣化や使用回数を減らすことを目的として始まりました。
薬のマイクロカプセルは、DDS(Drug Delivery System)とよばれ、患部に到達してピンポイント治療ができる仕組みで、患者に多大な貢献をしています。
他の用途としては香料や農薬、柔軟剤を入れたものもあり、柔軟剤の中の香料カプセルは空気中で時間をずらして少しずつ破裂する仕組みとなっています。
マイクロカプセルの機能のひとつは、温度や圧力などの刺激によって、芯物質の放出のタイミングをコントロールできることで、この技術は柔軟剤や芳香に徐放技術として応用されています。
また、熱に反応するマイクロカプセルの壁材は、感熱インクに応用されています。繊維では、生地に混合されたマイクロカプセルが熱を吸収・放出することで肌の表面温度を心地よい状態に保つように設計されています。