家庭用冷蔵庫内のアセトアルデヒドが室内環境におよぼす影響 | 化学物質過敏症 runのブログ

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/siej/22/2/22_159/_pdf/-char/ja

家庭用冷蔵庫内のアセトアルデヒドが室内環境におよぼす影響
村田真一郎1)*, 関根嘉香1), 佛願道男2)
1)東海大学大学院地球環境科学研究科〒259-1292神奈川県平塚市北金目4-1-1
2)日立化成テクノサービス株式会社日立事業所〒317-8555茨城県日立市東町4-13-
要旨
室内空気中におけるアセトアルデヒドの発生源および発生機構については不明な点が多く,これまで明らかとなっていなかった発生源が次々と見出されている。

一方で,家庭用冷蔵庫内には食品由来のカルボニル化合物の存在が見いだされ,さらに冷蔵庫と設置空間との間には空気の交換が行われていることが報告されている。

本研究では家庭用冷蔵庫内のアセトアルデヒド濃度の実態調査結果および冷蔵庫の漏気回数などをもとに,冷蔵庫からの当該物質の発生が居住空間の室内濃度にどの程度寄与するのかをモンテカルロ法により検討した。

その結果,嗅覚閾値(2.7・g/m3)に対しては,単身世帯を想定した設定条件では10%に満たない寄与率であったが,一般世帯(二人以上で構成される世帯)を想定した推定条件では25%に相当し,試行回数10,000回のうち,嗅覚閾値を上回るケースが6.4%あった。

一方で家庭用冷蔵庫由来のアセトアルデヒドは室内濃度指針値(48・g/m3)に対しては0.25~1.4%程度の寄与率に過ぎなかった。

以上のことから,家庭用冷蔵庫から発生するアセトアルデヒドのみでは室内の臭気や室内濃度指針値への寄与率は高いとは言えないものの,冷蔵庫は生活と密接に関係しているため,室内における他の発生源のように容易に撤去することができないという性質も持ち合わせている。

したがって,家庭用冷蔵庫が食品の保管場所のみならず,ガス状化学物質の発生源としての一面を有することにも着目すべきである。
1.緒言
アセトアルデヒドは,大気汚染防止法,悪臭防止法により規制されるアルデヒド類の1つであり,悪臭の原因となるほか,高濃度では鼻腔に強い刺激を与えたり1),がんを引き起こす可能性のある物質である2)。

室内における発生源としてこれまでに建材3,4),喫煙5),飲酒6)などが報告されている。

しかし,中西ら7)が住宅建材(木材,接着剤,塗料用材),家具(木材,塗料用材),趣味(接着剤),燃焼系暖房機器,調理用機器,喫煙,飲酒(呼気),二次生成および屋外大気に着目し,これら既知の発生源からの放散量を積み上げて室内空気中濃度を推定したところ,一般住宅における実測値の算術平均値(27・g/m3)を十分に説明できず,未確認の発生源が存在する可能性を示唆している。

これを裏付けるように,大貫ら8)は市販されている線香類を室内で燃焼させたところ,アセトアルデヒドをはじめとする48物質が検出され,使用条件次第ではアセトアルデヒド濃度が室内濃度指針値(48・g/m3)を超過する可能性があると報告している。

また高橋ら6)は,ヒト皮膚由来のアセトアルデヒドは室内濃度指針値レベルに対して0.87~2.3%程度寄与し,在室者が多い場合,皮膚から放散が無視できないほど大きな寄与を示す可能性があると報告している。

金9)はアルコール含有の消毒剤や芳香剤に由来するアセトアルデヒドの放散に関する報告をしている。

さらにはコピー機をはじめとしたオフィス機器からの発生に関する報告10)や,パソコンからの放散挙動の調査と業界規制の検討に関する報告11)など,室内においてあらゆるものがアセトアルデヒドの発生・放散源となっており,未知未確認の発生・放散源が存在している可能性はまだ高いといえる。

さて,家庭用冷蔵庫は一般家庭において食品の保存のために不可欠な家電製品であり,その普及率は9割を超えている12)。

食品からの揮発やエタノールの酸化による発生13,14),食品添加物としての使用15)などにより,食品とアセトアルデヒドは密接に関係している。

これらの背景のもと,近年著者らが家庭用冷蔵庫内の低級カルボニル化合物の濃度実態調査を行ったところ,アセトアルデヒドをはじめとする高濃度のカルボニル化合物の存在が見出された16,17)。
一方で,家庭用冷蔵庫はドアを閉めた状態でもドアの隙間や排水口などから室内との間で空気の交換が行われており,著者らによるトレーサーガス法を用いて冷蔵庫の漏気・換気回数が定量的に測定された報告18)がある。

同報告によると,測定期間中,ドアを閉めた状態での漏気回数は0.2回/h程度,ドアの開閉を行った場合の換気回数がその倍程度であったという結果が得られており,冷蔵庫が設置されている空間との間にある程度の空気の交換が行われていることがわかる。

以上のことから,冷蔵庫内のアセトアルデヒド濃度,設置されている空間の容積などによっては家庭用冷蔵庫から漏出したアセトアルデヒドによる悪臭や健康被害など室内環境への影響が懸念される。

そこで本研究では,家庭用冷蔵庫から発生するアセトアルデヒドの発生速度を求めるとともに,室内空気中のアセトアルデヒド発生源として家庭用冷蔵庫がどの程度寄与するかを,多くの分野で用いられ汎用性の高いシミュレーション方法であるモンテカルロ法を用いて推定した。

その結果,いくつかの興味深い知見が得られたので報告する。