化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(平成24年) | 化学物質過敏症 runのブログ

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化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(平成24年)
下井 俊子a
,田口 信夫a
,観 公子a
,大石 充男a
2. 界面活性剤の混入による食中毒
1) 事件の概要
事例1;平成24年5月30日,医療機関から保健所に,施設で天ぷらを喫食した21名中7名が苦味,喉の痛み,発赤などの症状を呈し,病院を受診しているとの連絡が入った.
保健所の調査によると,食事の中で明らかに天つゆの味がおかしく,口に入れた瞬間に強い苦味と喉が焼けるような痛みを感じた,または天つゆが泡立つと言っている者もいたとのことであった.
事例2;平成24年6月17日,保健所に,飲食店でさつまいもの天ぷらを喫食した家族3名が舌のピリピリ感,局所麻酔に似た喉の違和感,味覚異常などを感じ病院を受診しているとの連絡が入った.

保健所の調査によると,店主は食用油と誤って揚げ油に台所用合成洗剤を混入してしまったが,そのことに気が付かないまま客に天ぷらを提供したと話しているとのことであった.
2) 試料
事例1;店で保管していた味のおかしい天つゆ残品1検体,患者が持ち帰った味のおかしい天つゆ残品1検体,天つゆの製造に用いた調味料のみりん参考品1検体,しょうゆ参考品1検体,苦情後に作り直した天つゆ参考品1検体,計5検体.
事例2;さつまいもの天ぷら残品1検体,揚げ油残品1検体,計2検体.
3) 原因物質の検索
いずれの事例も患者の喫食状況,症状及び店主の話などから原因物質として界面活性剤が疑われた.

そこで,搬入された各検体について,界面活性剤の分析11)を行った.

事例1では試料を水で適宜希釈したものを試験溶液とし,ポリオキシエチレン系界面活性剤,直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤及び施設で使用していた洗剤(界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル及び直鎖アルキルベンゼン系を含む)を水で適宜希釈したものを標準溶液として用いた.

事例2ではさつまいもの天ぷら及び油に水を加えて抽出した水溶液を適宜希釈したものを試験溶液とし,ポリオキシエチレン系界面活性剤及び飲食店で使用していた洗剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含む)を水で適宜希釈したものを標準溶液として用いた.

TLCによる定性試験のためKieselgel 60プレート(100 mm×100 mm)に,各試験溶液及び標準溶液を適量スポットし,展開溶媒として酢酸エチル-アセトン-水(55:35:10)で展開後,ヨウ素蒸気により褐色の複数スポットパターン及びRf値を確認した.

またドラーゲンドルフ試薬を噴霧し,黄褐色の複数スポットパターン及びRf値を確認した.
その結果,事例1では店で保管していた味のおかしい天つゆ残品1検体及び患者が持ち帰った味のおかしい天つゆ残品から施設で使用していた洗剤と同じ成分の界面活性剤が検出された.また,参考品のみりん,しょうゆ及び苦情後に作り直した天つゆから界面活性剤は検出されなかった.

事例2ではさつまいもの天ぷら残品及び揚げ油残品から飲食店で使用していた洗剤と同じ界面活性剤が検出された.
4) 考察
事例1,事例2共に,試料から施設又は飲食店で使用していた洗剤と同じ界面活性剤が検出された.

よって,いずれの事例も界面活性剤の混入による食中毒であると断定された.
界面活性剤を酒や油等と誤認して食品に混入してしまう事例は,しばしば発生している12,13).事例1はラベルをはがしたみりんの空き容器に洗剤を詰め替えて使っていたものを,みりんと間違えて使用したことにより発生した事例である.

事例2は洗剤を販売された容器のまま使用していたが,元々の洗剤の容器が油の容器に類似した形状であったことから食用油と誤って揚げ油に混入してしまった事例である.

界面活性剤の食品への混入を防止するためには,界面活性剤の入った容器を食品の入った容器と明確に区別できるものにする必要がある.