5:「農薬中毒の症状と治療法」について(ラウンドアップに解毒剤は無い) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・1.農薬の剤型と中毒リスク
1)粉剤,粉粒剤,粒剤:固体でそのまま使用する剤
 微粉末である粉剤を動力散布機で散布する際に吸入するリスクが考えられます。

粉剤は一般に有効成分含有量が少なく,中毒リスクは低いのですが,かつてはパイプダスター(注)を使った水田での粉剤散布の際に,薬剤が噴出するパイプを支える役目(中持ち)の人が薬剤を大量に吸入し,中毒をおこす例が散見されました。
現在では散布方法の改善もあって,重篤な事故はほとんど発生していません。
(注:パイプダスターとは粉剤散布用ホースのことで,動力散布機から送られた粉剤入りの空気を,一定間隔で空けられたパイプの穴から噴出させて散布する仕組み。水田の両端で支えて散布するため,長さは20~40メートルもある。パイプは薄手で軽く,空気圧でまっすぐになるため,本来は2名で散布可能だが,パイプが水田に落ちて濡れると使えなくなるので,「中持ち」の人を置くことがあった。)
 粒剤は粉剤に比べ粒子が大きい剤で,粒剤の粒子を形成させるために結合剤などの特殊成分を含むため,飲み込んで胃壁などに付着した場合,通常の方法では洗浄が困難な場合があります。
2)水和剤,水溶剤,顆粒水和剤(ドライフロアブル剤):固体状製剤で,水で溶かして使用する剤
 水で溶かして意図的に摂取する事例がみられ,時に重篤な中毒例が報告されています。
3 )液剤,フロアブル剤,EW剤(エマルション剤),マイクロカプセル剤:液状製剤で,原液のまま,あるいは水で溶かして使用する剤これらの剤には,農薬を溶解,懸濁化,エマルション化,マイクロカプセル化するための補助成分(界面活性剤,カプセル化剤など)が複数含まれています。
4)乳剤,油剤:有機溶剤や乳化剤を含む液状製剤で乳剤は水に乳濁させて使用する剤,油剤は水に不溶の液体製剤で,そのまま,または有機溶剤に希釈して使用する剤
 乳剤,油剤には有機溶剤(キシレンなど石油系溶剤の他に,ケトン類,アルコール類など)が含まれているので,これらによる中毒にも考慮する必要があります。

さらに,石油系の溶剤では誤嚥が発生しやすく,肺炎への注意が必要です。
5)くん煙剤,くん蒸剤:有効成分を気化させて使用する製剤 実使用では,ガラス室やビニールハウス施設など密閉状態での使用が一般的です。

くん煙剤,くん蒸剤の気化した成分を吸い込み重篤な事故が発生しています。
6)その他
農薬製剤には有効成分とは別に,補助成分自体の毒性,有効成分と補助成分の複合作用や,補助成分どうしの複合作用による中毒にも考慮
する必要があります。
 展着剤(一般的に界面活性剤を含む)によってはメタノールが含まれているので,これによる中毒にも考慮する必要があります[2.その他の必要な応急措置,9)解毒剤・拮抗剤参照]。

2.農薬の混用
 中毒事故が発生した際,原因となった製品は1種類であるとは限りません。実際の農薬の使用場面では,散布作業の回数低減による省力化等のため,複数の農薬を混ぜて使用することがあります(混用)。

混用する剤は必ずしも同一の剤型とは限りません。水で希釈して散布する液剤と乳剤の組み合わせや,乳剤と水和剤の組み合わせなどがあり,混用の事例に基づいて登録範囲の散布濃度で使用することとされています。

さらに,殺虫剤どうしの混用,殺菌剤どうしの混用,あるいは殺虫剤と殺菌剤の混用など多岐にわたっています。

なお,有機りん系農薬どうしの混用は,毒性面で相加的な作用を示唆する知見もあることから,これを厳に控えることとされています。
 診断・治療にあたっては,中毒の原因が,混用による複数の農薬による可能性についても考慮する必要があります。
3.農薬使用時の防御
 農薬を使用する場合には,その農薬の毒性や使用時安全性の観点から,使用方法,散布機具にあった保護具(農薬用マスクまたは防護マスク,保護メガネ,防除衣,不浸透性手袋など)を着装する旨の注意事項(絵表示も参考)が農薬ラベルに記載されています。
 特にクロルピクリンなど土壌くん蒸剤の使用時には,専用の吸収缶付きの防護マスク(土壌くん蒸用)の着装が必須です。
 中毒発生時の保護具の着装状況についての情報も原因を特定するために有用です。