・2 絵の具・墨液
調査方法 (表2:調査絵具の概要、図3:チャンバー法の構成図)
1. 絵具から放散する化学物質の測定
絵具1.0g(墨液)を原液のままガラス板に塗布(50cm2)した試験体を、チャンバー内に設置。出口空気を採取し、VOC及びアルデヒド類を測定した。
2. 教室内空気中濃度変化の予測
得られたチャンバー内化学物質濃度より、初期放散速度及び一次減衰定数を算出。これらを用い、小学校教室内で絵具等を使用した場合の、教室内空気中化学物質濃度変化を予測した。予測時に想定した教室内環境及び使用絵具の条件を以下に示した。
3. 絵具に含まれる化学物質量の測定
絵具0.1gにアセトニトリルまたはメタノール1mLを加え、超音波で10分間抽出・遠心分離し、上清をアルデヒド類またはVOC類分析用カートリッジに添加し、分析した。
・教室内濃度予測時の室内環境条件及び塗布面積等
児童数40人、授業時間90分、教室容積180m3、換気回数2.2回、気温28℃、湿度50%。
塗布面積は絵具の場合、15分毎に1/6ずつ増加し、最終面積が0.0935m2(B4サイズ)とした。
墨液の場合は、経時変化はなく、0.021m2
(硯+塗布される文字分)とした。
なお、絵具は水で希釈しない。
調査結果 (図4:チャンバー内化学物質濃度、図5:教室内空気中物質濃度変化の予測、表3:各試料中の物質含有量)
1. 放散が認められた主な物質は、絵具1、2からはホルムアルデヒド、絵具3〜5及び墨液からはフェノールであった。ホルムアルデヒドのチャンバー内最大濃度は絵具1の約240μg/m3(塗布後1時間)、フェノールについては墨液の約1,600μg/m3(塗布後8時間)、次いで絵具3の約670μg/m3(塗布後7時間)であった(図4)。
2. 教室内濃度の変化を予測した結果、ホルムアルデヒドの増加濃度が最大になるのは絵具1を使用した場合の7.1μg/m3(作業開始1時間45分後)、フェノールの場合は絵具3を使用した時の12.3μg/m3(2時間30分後)であった(図5)。
3. 絵具1g当り、ホルムアルデヒドは8.0〜110μg、フェノールは580〜3,460μg含まれており、フェノールの方が数十倍多い事が分かった(表3)。
3 ニス・ラッカー
・調査方法 (表4:調査ニス等の概要)
1. ニス及びラッカー中のVOC類及び不揮発成分の測定
試料をメタノールで100倍に希釈し、加熱脱着チューブに5μL添加、加熱脱着-GC/MSで分析した。
不揮発成分は、試料約0.5gをガラス板に塗布し秤量後、27時間室温で乾燥し、再び秤量して算出した。
調査結果 (図6:試料中のVOC含有量(%))
1. 油性ニス:油性ニス1、2にはC3ベンゼンが最も多く、他にはC10アルカン、C11アルカンが多く含まれていた。その他、油性ニス1には1-メトキシ-2-プロピルアセテート(8%)、油性ニス2にはトルエン(3%)が含まれていた。油性ニス3については、不揮発成分が調査試料中最も少なく(23%)、C11アルカンが最も多かった(43%)。
水性ニス:水性ニス1には2-(2ブトキシエトキシ)エタノールが(29%)、水性ニス2は速乾性のため揮発性の高い2-プロパノールが(20%)、主に含まれていた。
ラッカー:速乾性のため、揮発性の高い有機溶剤が多く含まれていた。主な物質としては、2-プロパノール、ブタノール、酢酸ブチルに加え、指針値の設定されているトルエン(4%)、キシレン(13%)、エチルベンゼン(8%)等であった。
備考)ベンゼン環に炭素数n個の構造を持つ成分をCnベンゼン、炭素数n個の脂肪族炭化水素をCnアルカンとし、合計した。
※「トルエン・キシレン規制後の塗料中揮発性有機化合物」より(齋藤育江他:H18年度地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)