4:2013:畜水産食品中の残留有機塩素系農薬 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・4.日常分析
1) 畜水産食品におけるポジティブリスト制度
2006年にポジティブリスト制度が施行され,全ての食品に対し農薬等の残留基準又は一律基準が新たに設定された.
特に畜水産食品は今までに対象となる基準が少なく,食肉については脂肪中濃度での残留基準が設定されていたが,ポジティブリスト制度では筋肉,脂肪や肝臓など部位に分けられ,全重量中濃度での基準が設定され,魚介類についても目の種類により細かく設定された.
試料のサンプリングについても,通知の総則11)の試料採取で食肉などの部位の採取について,魚介類などは可食部,殻の除去などの扱いなど詳細に示された.

分析法については残留基準が少なかったため通知分析はほとんど示されていなかったが,一斉試験法(通知試験法)でGC/MSによる農薬等の一斉試験法(畜水産物)及びLC/MSによる農薬等の一斉試験法(畜水産物)が示され,個別試験法(通知試験法)についても畜水産物の農薬の試験法が随時通知されている.
2) 畜水産食品の日常分析結果(2007~2011年)
2007年から2011年に都内で流通した畜水産食品について当センター広域監視部及び都・特別区保健所からの依頼で有機塩素系農薬等の分析を実施した.

農薬の異性体,代謝体など検査対象化合物は残留基準の留意点に従い残留分析をした(表4).分析法はサケ類の残留調査で採用した方法を用いGC/ECDで測定し,検出した場合はGC/MSでの確認を行なった.

定量限界は食肉(筋肉)・魚介類は0.01 ppm,鶏卵(液卵)及び牛乳(生乳)は0.002 ppmとした.

調査した5年間で牛肉,豚肉,鶏肉及びその他の食肉(羊や鴨などの家禽類等)の定量限界を超えての検出は無かった.食肉については日常分析では筋肉の部位を検査しているため,検体の脂肪含量は少なく検査対象の脂溶性の高い有機塩素系農薬の残留は少なくなったと考えられる.
生乳は乳牛から得られた乳を試料としているため,牛乳に比べ脂肪含量が高いケースもある.藤沼21)らは1983年から2002年の20年間,都内の乳処理工場で収去された生乳の有機塩素系農薬の年次推移について,DDT,BHCなどで1980年代は約70%の検出率が見られたが,1990年代DDTは10%の検出率で検出値も減少し,2002年には検出限界の0.001 ppmを超えて検出されなかったと報告している.

今回の調査では,生乳から定量限界を超えての検出はなかった.また,卵加工品を製造するための原料である液卵についても定量限界を超えての検出は無かった(表5).

魚介類及びその加工品は,例年うなぎの蒲焼について実施しているが,この数年より稚魚の減少や価格高騰のため検体の確保が難しくなっている.

今回調査した結果は43検体中6検体からDDTが0.01~0.07 ppm,1検体からγ-BHC(リンデン)0.03 ppmが検出された.検出濃度は基準値以内であるが低濃度での残留が認められる.

笹本ら22)が1993年から1999年に輸入されたうなぎ蒲焼等の調査で,中国からの検体でγ-BHCの検出濃度(脂肪中濃度)が5.34 ppmを検出した事例があることから,養殖時における事故や汚染された飼料により高濃度の残留も考えられる.

継続した監視の必要性がある.
魚類を対象とした検査結果はDDTの検出頻度が多く,カラスガレイやサワラなどから低濃度であるが検出された.
また同じ検体からDDTのほかディルドリン,クロルデン及びHCBが検出された事例があった.

これは養殖サケの調査において,デンマーク産・ノルウェー産の残留パターンとほぼ同じであり,地域的な環境に関連性があると考えられる.アサリ加工品からDDTが検出されたが,その他,脂肪含量の少ないエビなどからは検出されなかった(表6).