4:「電磁過敏症」とは何か? | 化学物質過敏症 runのブログ

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・₃ .今後の研究のための手法上の検討課題
 実験研究と観察研究には,それぞれ表 ₁ のような長所と短所がある.電磁界ばく露がNSPSに影響を及ぼすかどうかについての結論を導くには,両者からの知見を組合せることが必須である.


 これまでの実験研究と観察研究からの証拠に基づけば,低レベルの電磁界とNSPSとの関連は支持されない.

この分野の文献を検討した多くのレビューがこの結論に達している(Levallois [₇₅];Rubinら [₁₉];Seitsら [₇₆];Röösli [₅₁];Kundi及びHutter [₇₇];Rubinら [₅];Röösliら [₃₁];Rubinら [₃₇];Röösli及びHug [₂₆];Augnerら [₆],Baliatsasら [₅₆]).実験研究と観察研究のいずれにおいても,手法上の質と,自身がばく露されているという信念が,報告されている関連の重要な決定因子のようである.但し,実際のばく露の影響を排除する前に,今後の研究で検討すべき点が幾つかある.
 実験研究に関しては,電磁界が急性症状のトリガとなる一部の小集団が存在する可能性が依然としてあるものの,これまでの研究では,ばく露に対して実際に敏感な人々を採用できず,生体電磁気学的な機序を支持し得る知見を示すことができていない(Rubinら [₃₇]).EHSの症例の妥当性のある診断クライテリアが策定されれば,電磁界に対して敏感かも知れない均質なグループの同定に資するであろう(Baliatsasら [₅₆]).誘発研究に参加した人々の数が少ないこともこれに関連する.

特に,ばく露の有意な影響が認められなかった研究では,参加者の数が一般的により少ない(Rubinら [₃₇]).
 実験研究は無作為化・二重盲検化すべきであり,症状のない対照群を含めることが望ましい.適切にデザインされた誘発研究では,評価対象のアウトカムに影響し得る,バックグラウンドでの電磁界以外への環境ばく露(例えば騒音)を制御すべきである.

電磁界が原因とされる症状はばく露後も数日間続くことが報告されているので,キャリーオーバーまたはハングオーバーと呼ばれる影響を制御し,セッション間の症状の過大報告を防ぐため,ベースラインの症状の重症度を評価することや,誘発の間にインターバルを設けることも重要である(Roosliら [₁₄]).加えて,認知反応や生理学的反応を調べる場合,馴化セッションを用いることで,不慣れな実験プロセスによる参加者のストレスを最小化すべきである(Rubinら [₃₇]).
 観察研究に関しては,明確なばく露のコントラストの同定が課題であり,個人のばく露の特徴付けの改善を優先すべきである(Bolte及びEikelboom [₇₈]).最も進んだ評価手法でさえ,ばく露の誤分類があり得る(Bolteら [₇₉])ことに鑑みて,ばく露のモデル化とばく露メータによる測定の組合せが,疫学研究のための具体的なアプローチであろう(Freiら [₇₀, ₈₀]).
 これまでの疫学研究ではいずれも,NSPSは自己申告のアンケートのみによって測定されたが,これは頻度と重症度の点で大きく異なっていた(Baliatsasら [₅₆]).医学的障害を排除し,症状に器質的な説明があるかどうかを判定できるのは臨床検査だけなので,疫学研究で報告されている症状を非特異的と分類できるかどうかは依然として不明である.

自己申告のアウトカムを用いることのもう一つの限界は,情報バイアスや選択バイアスによって生じる,ばく露とアウトカムとの見かけ上の関連があり得ることである(Röösliら [₃₁]).開業医からの登録ベースの症状と電磁界ばく露データの組合せにより、有益な代替アプローチが得られるであろう.
 子どもや思春期層,ならびにEHSを呈する人々に関する,実際の電磁界ばく露とNSPSとの関連についての疫学 的 証 拠 は 限 定 的 で あ る(Heinrichら,[₆₆],[₇₄];Röösliら [₅₉]).

そのような集団におけるばく露の潜在的影響についての全体像を描くため,更なる研究が寄与するであろう.
 環境要因のインパクトを理解するため,社会的要因や個人的要因を考慮することも重要である(Pageら [₈₁]).心理学的変数とNSPSとの関連が,幾つかの研究で示されている(Rubinら [₇₃, ₈₂];Osterbergら [₈₃];Landgrabeら[₈₄];Johanssonら [₈₅];Szemerszkyら [₅₅];Baliatsasら [₈₆]).より最近の研究では,十分な数の交絡因子を考慮しており,幾つかの心理学的要因とあわせて認知上のばく露の影響を調査する傾向も見られる.

ばく露されているという信念を示す認知上のばく露は,実際のばく露の近似値としてではなく,別の概念として評価すべきである.
IV. 結論
 これまでの研究では,電磁界ばく露と非特異的な身体症状との因果関係を支持する説得力のある証拠は認められていない.

この結論は,複数の公的機関によって支持されている(WHO [₈](後述の付録を参照);AGNIR[₁];BAFU [₈₇];FAS [₈₈];European Commission [₈₉];ARPANSA [₉₀]).

但し,そうした症状を説明し得る潜在的要因の役割について,更なる研究の余地は依然として残されている.

 

runより:基本的に「電磁波過敏症を認めたくない」という報告書ではあります。

しかし懐疑的な意見を知らなければ納得のいく研究は出来ないというものです。