4 争点3(損害の有無及びその額)
合計 1995万4 3 418円
以上より,原告の損害額は,1995万4348円となる。
争点4(消滅時効の成否)
(1)雇用契約上の安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法1 6 7条1項により10年と解され,かかる10年の消滅時効は,同法1 6 6条1項により,損害賠償請求権を行使し得る時から進行するものと解される。
そして,一般に安全配慮義務違反による損害賠償請求権は,その損害が発生した時に成立し,同時にその権利を行使することが法律上可能となるというべきである(最高裁平成6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号441頁)。
(2)認定事実(1)のとおり,化学物質過敏症は,一定量の化学物質の曝露を受けた後に,原因物質とは無関係な化学物質による低量の曝露を受けることで症状が生じるものであり,その病態,原因ないし発生機序が医学的に明らかになっていない。
そのような化学物質過敏症の性質を考慮すれば,医師からの化学物質過敏症との診断ないし意見がない限り化学物質過敏症に罹患したとの事実は詰め難いから,医師からの化学物質過敏症との診断ないし意見が示された時点で,損害が発生したということができる。
本件では,原告は,平成18年5月26日に初めて関西労災病院から化学物質過敏症の疑いが強いとの診断を受けたと認められるから,早くとも当該時点で損害が生じたというべきである。
したがって,その時から本件訴えの提起(平成25年9月12日)までは,10年間は経過していないから,消滅時効期間の経過は認められない。
6 争点5(自由定年制度に基づく退職金請求権の成否)
第4 結論
以上のとおりであるから,原告の請求は1995万4348円及びこれに対する平成25年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
runより:以上です。
裁判で勝つには相当な証拠が必要になる事が分かりますね。
この判決が今後判例として適応される事を望みます。