15:花王化学物質過敏症裁判判決文 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(4)作業環境測定義務について
 ア 事業者は,安衛令別表第6の2第1号から47号までに掲げる有機溶剤に係る有機溶剤業務を行う屋内作業場において,6か月以内ごとに1回,定期に,当該有機溶剤の濃度を測定し,測定結果を3年間保存する義務を負う(安衛法65条,安衛令21条10号,有機則28条)。
  作業環境測定が,作業環境の現状を認識し,作業環境を改善する端緒となるとともに,作業環境の改善のためにとられた措置の効果を確認する機能を有するものであって,作業環境管理の基礎的な要素であることに鑑みれば,被告は,安全配慮義務の内容として,作業環境測定義務を負うと解すべきである。
 イ 本件では,原告が,本件工場の研究本棟の1 0 7号室及び110号室において,クロロホルム(安衛令別表第6の2第14号)及びノルマルヘキサン(同第39号)等の有機溶剤を使用する検査分析業務行っていたのであるから,被告には,1 0 7号室及び110号室におけるそれら有機溶剤の濃度を測定する義務を負っていた。

そして,弁論の全趣旨から,被告は,かかる測定を行っていなかったことが認められるから,作業環境測定義務の違反が認められる。
 ウ 被告は,10コ号室は有機則の適用除外であり,110号室はそもそもクロロホルム濃度を測定する必要がない職場環境であると主張する。 

しかしながら,有機則上,作業環境測定義務を免れるためには,消費する有機溶剤の量が許容消費量を超えないときなどの要件を満たすほか,所轄労働基準監督署長の認定を受ける必要があるところ(有機則3条),本件で,被告は,和歌山労働基準監督署長から適用除外についての認定を受けた事実は認められないから,作業環境測定義務を免れない。
(5)外気面積確保義務について
 ア 事業者は,安衛則上,労働者を常時就業させる屋内作業場においてはに窓その他の開口部の直接外気に向かって開放することができる部分の面積が,常時床面積の20分の1以上になるようにする義務を負い,ただし換気が十分に行われる性能を有する設備を設けた場合には当該義務を免れるとされている(安衛則601条1項)。
 イ 本件では,認定事実(4)ア(イ)のとおり,1 0 7号室の床面積は48・であり,外に通じる窓の面積は6.2・であるから,上記20分の1以上の面積確保義務は尽くされていると認められる。また,110号室についても,床面積の20分の1以上になる窓が設置されていないと認めるに足りる証拠はない。
 ウ 原告は,窓が錆びていたために開閉できない状態にあったと主張し,これに沿う原告本人の供述があるが,これと反対趣旨の証人㎜の供述に照らしてにわかに採用することができず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 エ したがって,外気面積確保義務の違反を認めることはできない。
(6)温度管理義務について
 ア 事業者は,安衛則上,暑熱又は寒冷の屋内作業場で有害のおそれがあるものについては,適当な温度調節の措置を講じる義務を負うところ(安衛則606条),原告は,1 0 7号室の室温について,約30台りガスクロ装置が常時稼働し,ガスクロ装置内の熱気が排出されていたことで,常時30度を超え,場合によっては40度を超える気温になっていたと主張し,原告もこれに沿う供述をする。
   しかしながら,これと反対趣旨の証人㎜の供述があること,平成24年の衛生日誌(乙5 7,81の1~51)によればl 07号室の気温が25度を超えたことはなかったことに照らせば,上記原告本人の供述はにわかに信用することができず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 イ・・原告は,上記衛生日誌の記入者の筆跡が同じであるとして,信用性がない旨主張する。

しかし,同衛生日誌に記載された筆跡は同一人物が複数の人名の箇所を記載していたことがうかがわれるものの,かかる事実があったからといって意図的に虚偽の記載がされていたと認めることはできないのであるから,この点に関する原告の主張は前記認定を左右しない。