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2019.01.08 「脱・香害」めざし、意見書を政府に提出する市議会が相次いでいる
シリーズ「香害」第8回
岡田幹治(ジャーナリスト)
「香害」が新年早々から、被害者を悩ませている。
初詣の参拝者でにぎわう神社周辺が、衣服から放出される柔軟剤臭で覆われていたからだ。
ある被害者は息を止め、参拝もそこそこに立ち去ったという。
そうした中で、市民や自治体による「脱・香害」へ向けた取り組みが始まっている。
その一つが、各地の市議会による「政府や国会に香害対策を求める意見書」の提出だ。
(注)「香害」とは、柔軟剤など香りつき商品の成分で健康被害を受ける人たちが急増している現象を指し、「脱・香害」とは、香害から抜け出すこと、つまり香害の被害者が減り、新しい被害者が出なくなるような状態を指す。
◆「香料」の成分表示の義務づけなどを求める
先陣を切ったのは、埼玉県所沢市議会だ。
昨年10月4日に「柔軟仕上げ剤など家庭用品に含まれる香料の成分表示等を求める意見書」を議決し、首相・文部科学相・厚生労働相・経済産業相・内閣府特命担当相(消費者・食品安全担当)に提出した。こんな内容だ――。
柔軟剤仕上げ剤などに含まれる香料によって、健康被害を受ける人が増えており、中には学校や職場に行けなくなるなど深刻な状況の人もいる。
政府は香料成分の表示など、香料の安全性に対して実効性のある法的規制を行うべきである。
具体的には次の4対策を求める。
▽「香害」で苦しむ人がいることを周知徹底し、ポスターなどで香料自粛に向けた啓発をすること。
▽柔軟仕上げ剤や消臭剤などを「家庭用品品質表示法」の指定品目にすること。
▽香料の成分表示を義務づけること。
▽国民生活センターに香害専用窓口を設置するとともに、都道府県に香害の相談窓口を設置すること。
これに続いて埼玉県吉川市議会(12月14日議決)とさいたま市議会(12月21日議決)が同じ表題の意見書を議決した(さいたま市議会意見書の宛先は首相、衆参両院議長、厚労相、経産相、環境相)。
一方、宮城県名取市議会は12月17日、「香料の健康被害に関する調査・研究や香料自粛に関する意見書」を議決し、関係大臣に提出している。
この意見書は、日本には香料に関する法的規制がなく、被害者の多くが問題の解決に困難を感じていると指摘し、香害の周知徹底と国民生活センターの専用窓口設置に加え、次の二つを求めている。
▽香料の健康被害に関する調査・研究を行い、法的規制について検討すること。
▽学校を含む公共施設等に芳香剤や消臭剤を置かないことを徹底すること。
◆背景に香料の安全性への不安
四つの市議会とも、香害の深刻さを知った議員が提案者となり、他の議員を説得して議決にこぎつけている。
多くの議員が賛同したのは次のような事情があったからだと考えられる。
一つは、深刻な被害が広がっていることだ。
これについては本連載で報告してきた。
二つは、香りつき商品に欠かせない「香料」の安全性に対する不安だ。
香料と一口にいうが、実は3000種類以上の物質(成分)あり、柔軟剤などのメーカーはそれらから複数(数種~百数十種)の成分を選んでブレンドし「調合香料」として使っている。
しかし、商品には「香料」として表示されるだけだ。
また成分の安全性は、世界の香料業界の団体(国際香粧品香料協会=IFRA=イフラ)の自主規制に委ねられているが、この「お手盛り」の規制は欠陥が多く、健康に有害な成分を排除しきれていないと、アメリカのNGOなどが指摘している。
柔軟剤などに使用されている香料の中には、「喘息を発症・悪化させる成分」「皮膚アレルギーを発症・悪化させる成分」「発がん性のある成分」「ホルモン攪乱作用がある成分」などが含まれている可能性があるのだ。
しかし、「香料」としか表示されないから、そうした成分を避けたくても避けようがない。