・出典:化学物質問題市民研究会
・欧州委員会 研究開発情報サービス(CORDIS) 2018年7月31日
難燃性ナノコンテナー
情報源: 欧州委員会 研究開発情報サービス(CORDIS), July 31, 2018
Fire-resistant nanocontainers
https://cordis.europa.eu/result/rcn/236354_en.html ;
https://cordis.europa.eu/result/rcn/236354_en.html
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年8月6日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/flame_retardants/180731_CORDIS_Fire-resistant_nanocontainers.html
ポリマーは我々の日常生活で重要な役割を果たすが、それらはまた、火災のリスク増大をもたらす。
効率的な難燃剤は、不慮の火災から人の安全を確保し、家財を守る要である。
ポリマー業界は、高い可燃性ポリマーによって引き起こされる火災の影響を低減するために難燃剤に目を向けてきた。
しかし、ハロゲン化合物のような従来の難燃剤は、環境での残留性及び有害性のような、いくつかの重大な欠陥を持っている。
その上、それらの使用は現在、欧州委員会の REACH 規則(化学物質の登録、評価、認可、制限)によって制限されている。
機械的及び熱的特性の両方を強化するために難燃性ナノ材料の開発は、難燃性の領域で最も有望な課題の一つであると考えられている。
EU が支援する NOFLAME プロジェクト(訳注1)は、”ポリマーのナノ材料への応用を拡大しつつ、難燃性とポリマー分解の理解への新たなアプローチにドアを開いた”と、コーディネイターであるキャサリーナ・ランドフェスター博士は述べた。
”ハロゲンを使用しない難燃剤という環境適合性と経済的な競争力が相まって、これらの材料は商業的関心をひきつけるであろう”。
ナノ材料分散の解決
プロジェクト参加者らは、無機及び複合ナノ物質の難分散性と低界面接着性の問題を解決するために新たなナノコンテナを合成した。
これは、特に有機及び無機の難燃化合物のカプセル化による難燃性応用に適する。
”それは、温度安定性が低く、燃焼性が高いことにより、有機殻(organic shells)の応用が制限されるようなところでの新たな応用に導くであろう”と、ランドフェスター博士は説明する。
”広範な物質をカプセルに包む能力は、将来の応用のために多機能ナノ材料を開発する時にナノコンテナーを非常に望ましいものにする”と、ランドフェスター博士は指摘する。
建築物のための熱エネルギー貯蔵材料であるパラフィンワックスのカプセル化はそのような例のひとつである。
科学者らはどのような疎油基(lipophobe)をも添加せずに、数か月にわたり乳剤(emulsion)の高い安定性を達成した。
均一化のためのマイクロ流動化装置の使用は、超音波処理手法に比べて、粒子サイズ分布をより一様にし、乳剤のより大きな安定性、反復性、及び拡張性をもたらすことを彼らは観察した。
ポリマー基質(polymeric matrices)に埋め込まれたナノコンテナは、エポキシ樹脂中で良好な分散、600度Cで顕著な炭化の上昇、及び総熱放出の低減を示した。
このことはナノコンテナーが参照商業材料よりゆっくりと燃焼することを意味する。
難燃剤ナノコンテナのための下準備
発見は、合成されたナノコンテナは、エポキシ樹脂中に埋め込まれると、熱安定性の向上と可燃性の低下の改善を示している。
”NOFLAME は、難燃剤ナノ材料とコロイド科学の他の研究者らによる難燃剤のメカニズムとポリマー構造の分散に関する理解の改善を直接的にもたらすであろう”と、ランドフェスター博士は説明する。
研究の取り組みはまた、マイクロ流動化装置を通じてのポリマーのミニエマルションの規模拡大に関する知識に貢献した。
プロジェクトチームは現在、バイオ関連応用のための新たな材料の規模研究を実施中である。
”会社は彼らの従来の難燃剤を有害性のより低い REACH と調和する他の物質に替えることを積極的に求めているので、我々の研究はポリマー産業界に重要な影響を与えるであろう”と、ランドフェスター博士は結論付けている。
runより:ナノレベルの怖さはその小ささにあります。
人体の中のどこにでもはまり込んで残留する危険性があります。