合成油脂
では、合成油脂についてみていきましょう。
大豆油、菜種油のような液体の油脂に触媒を加えて水素を作用させると、油脂の不飽和脂肪酸に水素が結合して固体に変化します。
つまり大豆油、菜種油などが固体であるバターのようになってきます。
これは、水素を結合させることにより不飽和脂肪酸が減少し、飽和脂肪酸が増えるためです。天然の油脂に合成化学的に水素を結合させた合成化学物質なので、合成油脂といえます。
業界では硬化油、水素添加油、加工油脂、精製加工油脂などと呼ばれており、食品の原材料表示には「食用油脂」と表示されている場合があります。
「合成」という言葉は決して使用されません。消費者に嫌われないためです。
この合成油脂に水、食塩、合成乳化剤、合成着色料であるβ‐カロテン、合成香料などを加えたものが、いわゆるマーガリン、人造バターです。
ちなみにマーガリンに使用されているβ‐カロテンは化学合成品であり、バターのように見せるため黄色に着色する目的で使用されます。
合成油脂は原料油脂や水素の結合量を調節すればハード型のもの、ソフト型のものが製造できます。
これは食品メーカーにとって大きな利点です。
・ハード型
パン、製菓によく使用される
・ソフト型
パンなどに塗りやすい、扱いやすいため家庭用として使われる。ファットスプレッドは低温でも柔らかいため、よく売れています。水の割合を増やすとソフトになります。
・ショートニング
合成油脂に動稙物油脂、乳化剤等を加えてつくります。パン、クッキー、ビスケットなどをつくるときに添加すると、サクサク感が出るのです。
このように合成油脂は非常に多くの食品に使用され、マーガリン、ファットスプレッドとして人々の家庭の冷蔵庫に入っているのです。
ちなみに、マーガリン、ファットスプレッドは油脂に水を加えてつくりますが、ショートニングには水は加えられません。
最近少しですがマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングで合成油脂を使用していないものも出回っています。
原材料表示ではわからないことが多いですが、トランス脂肪酸ゼロと書いてある物を買いましょう。
では次回は、合成油脂に含まれ生命の危険に関わるともいわれるトランス脂肪酸についてみていきます。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)