・その2005年調査の結果と今回の調査結果を比較したものが図6である。
2005年当時、薬剤の定期的散布をしていないと回答したのが6社だけであった(企業名は示されていない)。したがって、この12年で2倍以上に増えたことになる。
2005年の『アエラ』の調査と比較すると 時をほぼ同じくして、週刊アエラが2005年7月18日号で「有機燐剤 電車・飛行機は大丈夫か」という記事で、交通機関27社へ質問にアンケート調査を実施している。
回答があった20社の内17社が鉄道事業者で、その時の回答と今回の回答を比べてみると、使用中止した会社もあれば、逆に頻度を増やした会社もあることがわかった。
改善された例では京王電鉄で、2005年には「電車内、座席下に年1回散布」との回答だったが、今回は散布を止めていた。
また名古屋鉄道も2005年には「車両は床、座席、連結幌にビューラックス(次亜塩素酸 NA:殺菌)を90日に一度噴霧」とあったが、今回は「清掃業務効率化のため散布していません」と回答。
逆に悪化した例は、東急電鉄で、2005年には「電車内は金鳥エクスミン乳剤を月1回散布」だったが、今回も使用薬剤はエクスミン(金鳥)を車両内の清掃に合わせて20日に1回程度実施」と頻度が増えている。
また近畿日本鉄道も以前は「特急車両内にゴキブリ駆除剤年1~2回使用」とあったが、今回は「ゴキブリ駆除年4回、ダニ、クモ駆除年1、2回」と増えている。
南海鉄道も以前は「車両内の座席の下部にヘキサチン SV を年2回」から、現在は「レナトップ(エトフェンブロックス)年3回(検査周期で)」と1回増えている。
使用頻度などがほぼ変わらない事業者は、JR6社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)と、小田急、西武鉄道である。
2020年目標に合わせてばく露を最小限にするために
薬剤の定期的散布を止めた例を参考にすると、清掃業務の効率化や、害虫が見つかった場合のみの使用で対応できている。
人のおう吐物などの清掃についてはノロウイルス対策として殺菌剤の使用は避けられないが、定期的に殺菌剤を散布することで感染症予防などの効果が果たしてあるのかは疑問だ。
効果を証明できない使用法での薬剤散布は中止したほうがよいのではないか。
国民会議ではアンケート調査結果をもとに、有害化学物質による人と環境への悪影響を最小化するという2020年目標達成のために不必要な殺虫・殺菌剤の使用中止を訴えていく計画である。
参考文献
1)「鉄道車両における衛生的環境の確保等に関す
る調査検討会」『運転協会誌』2006.8
2)「有機燐剤 電車・飛行機は大丈夫か」『AERA』
2005.7.18