・Decourtye et al. (2004)は実験条件と半野外条件で砂糖溶液に加えたイミダクロプリド (24 μ g/kg)とデルタメトリン(500 μ g/kg)をミツバチコロニーに与えた。
この場合、デルタメトリンで死亡が認められたが、イミダクロプリドでは死亡はなかった。
イミダクロプリドやデルタメトリンで汚染した糖蜜により、ミツバチは餌をあさることや巣箱に入ることが減少した。
イミダクロプリドはミツバチの嗅覚による学習に悪影響を与えたが、デルタメトリンは学習に影響を与えない。
Coline et al. (2004)は、昆虫が餌をとる行動への影響は致死量以下でも変化するので、自由に飛んでいるミツバチで様々な変化を定量的で正確に調べようとした。
彼らの観察では、浸透移行性殺虫剤であるイミダクロプリドは半数致死濃度の 70 分の 1 という低レベ ルで、活発なミツバチの割合を低下させ、さらにその 1/3 で餌場を訪れる回数を減らすことを発見した。
Yang et al. (2008)は低レベルのイミダクロプリドがミツバチの働き蜂の餌をとる行動に対する影響を与えるか調べた。
働き蜂が同じ餌をとる場所に再び訪れるまでの時間を測定した結果、イミダクロプリドに被ばくした働き蜂は再訪する時間を多く必要とし、その遅れはイミダクロプリド被ばくレベルに関係があることを発見した。
高レベルのイミダクロプリドにより働き蜂は行方不明となったり、再訪するのが次の日になったりした。
以上の結果はイミダクロプリドが餌をとる行動に影響を及ぼすことを示すと、Yang et al. (2008)は考えた。
さらに、ミツバチの視覚による学習にイミダクロプリドが悪影響を与えると、Han et al.(2010)は報告している。
以上の所見に対して、バイエルの Schmuck (2004)は、イミダクロプリドやその代謝物はミツバチの死亡率や行動異常と関係がないと主張している。
また Nguyen et al. (2009)はイミダクロプリドによるトウモロコシ種子処理がミツバチに悪影響を与えないと考えている。
米国でも農作物の受粉をするミツバチの減少が問題になっている。
Mullin et al. (2010)はミツバチの蜜ロウや花粉、ミツバチ自体などを調べ、121 種類の農薬を検出した。
調べた 887 サンプル中約 60%に少なくとも 1 種類以上の浸透移行性農薬が存在した。
見つかった農薬はフルバリネートやクマホス、クロロタロニル、アルジカーブ、カルバリル、クロルピリホス、イミダクロプリド、ボスカリド、キャプタン、マイクロブタニル、ペンデメタリン、アミトラズなどが検出されている。
これらの農薬の影響は今後検討されるべきであると、Mullin et al. (2010)は述べている。
昆虫個体群への影響
土壌に使用されたイミダクロプリドは、植物中に入り、蜜に移動し、寄生バチ Anagyrus pseudococci を殺すことが報告されている。
またピンクレディービートル Coleomegilla maculata や ヤ マ ト ク サ カ ゲ ロ ウChrysoperla carnea の生存に悪影響を与え、行動にも影響を及ぼすことが報告されている (Krischik et al. 2007)。
カナダの Kreutzweiser et al. (2008)は、ツヤハダゴマダラカミキリ Asian longhorned beetleの駆除のためにサトウカエデにイミダクロプリドを使った場合、落ち葉中のイミダクロプリドが葉を分解する生物に影響を与えるかどうか調べた。
イミダクロプリドは野外のカエデにある現実的な濃度で、葉を細かくする水生昆虫やミミズの生存には影響を及ぼさないが、悪影響を与えることが報告された。
これらの動物の摂食が減少し、葉の分解が減少し、 ミミズで体重減少が見られ、微生物による分解も減少した。
これらの結果は、イミダクロプリドで処理されたサトウカエデの葉は、標的以外の生物に影響を及ぼすことにより水中や陸上で天然の分解を減らすことを示している。
水生動物への影響
ミジンコの慢性毒性研究で、イミダクロプリドとノニルフェノールとの間で相乗作用が見られている (Chen et al. 2010、次章にある他の化学物質との相互作用を見よ)。
農作物への影響
イミダクロプリドが稲の発芽および初期生長に及ぼす研究がある (Stevens et al. 2008)。イミダクロプリドは播種前の使用では発芽に影響を及ぼさないが、発芽中にイミダクロプリドに曝すと悪影響が強くなり、品種によって感受性が異なると報告している。
イミダクロプリド耐性
イミダクロプリドに対する昆虫の耐性の発生が問題になっている。Gerry and Zhang (2009)はイエバエでイミダクロプリド耐性を調べた。カリフォルニア州で 2003 年にイミダクロプリドが使われ出してから、その過剰使用により 5 年間で、かなりのイエバエが耐性を獲得したことが分かった。
イミダクロプリドは発芽中の稲に悪影響を与えることがある
イミダクロプリド使用により耐性昆虫が出現している