11:平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・Ⅲ.研究結果報告 
1.低濃度のホルムアルデヒドに長期曝露されたマウス嗅覚系の形態学的解析 
 
研究協力者 市川眞澄、林 洋((財)東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所) 
 
(1)研究目的  嗅覚はニオイを感受する感覚系である。

ニオイは化学物質により引き起こされる。

このニオイ物質 は吸気とともに鼻腔に取り込まれ鼻腔の奥にある嗅覚器に到達する。

ここで、感覚細胞(嗅細胞)に受 容され、その情報は嗅球から大脳辺縁系を経由して高次脳中枢へと運ばれる。この感覚系は嗅覚系と 呼ばれる。

低濃度ホルムアルデヒド(80,400,2000 ppb)長期曝露により、嗅覚系にどのような影響を 与えるかを嗅覚器、嗅球、大脳辺縁系で形態学的に解析した。

嗅覚系のなかで、嗅覚器の特徴は、嗅細 胞が外界に接していることである。

この理由から、外界の様々な物質に曝露されてその影響を直接を 受けることである。

嗅上皮を破壊したりあるいは鼻腔をふさぐなどして嗅神経の活動を抑制すると、嗅 球のドーパミンニューロンの活動が変化する。

これをドーパミン合成酵素のTH(チロシン水酸化酵素、 (tyrosine hydroxylase))量あるいはTH陽性細胞が減少することで解析可能である。

この方法により、 嗅神経の活動をモニターするのには、大変有効である。

そこで、TH抗体により免疫染色し、染色された 細胞数を計測することにした。

嗅覚系の高次中枢である大脳辺縁系特に扁桃体は、本能行動、特に摂食 や情動に強く関わっている。

また、視床下部との神経連絡も密であることから、自律機能や内分泌機 能への影響も考えられる。

そこで、嗅球からさらに高次中枢への影響を明らかにするために、嗅球の大 脳辺縁系投射部位である梨状葉および扁桃体におけるニューロンを解析した。

この解析のために、 Parvalbuminと、Calbindinの Ca結合タンパク質免疫陽性ニューロンを用いた。

大脳辺縁系におけるこ れらのニューロンは、抑制性シナプス伝達物質である GABA と共存することが知られている。

したがっ て、これらGABAニューロンの増減活動をモニターできれば、機能的解析に大変有効であると考えCa結 合タンパク質免疫陽性ニューロンの低濃度ホルムアルデヒドによる影響を解析した。   

(2)方法  低濃度ホルムアルデヒド(0 ,400,800, 2000 ppb)を3ヶ月間曝露したマウスを、組織標本用に固定 し,嗅覚系(嗅上皮、嗅球および大脳辺縁系)を形態的に電子顕微鏡および免疫細胞化学的に解析した。 

特に、嗅球では、ドーパミンニューロンのマーカーであるチロシン水酸化酵素(TH)および Ca 結合タ ンパク質のうち、Parvalbumin と、Calbindin の抗体を用いた免疫細胞化学法を、大脳辺縁系では、Ca 結合タンパク質のうち、Parvalbumin と、Calbindin の抗体を用いた免疫細胞化学法をもちいて解析を おこなった。