10:平成15年度 本態性多種化学物質過敏状態の調査研究研究報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・第2章 マウスを用いた動物モデルに関する研究
 
Ⅰ.研究結果の概要 
 
平成 15 年度は、これまでの 3 年間の研究で得られた動物モデルでのホルムアルデヒド曝露 による過敏状態の誘導を支持する指標のより詳細な検討を行うとともに、化学物質の特異性 との関連、およびその過敏状態とアレルギー反応との相違について検索した。

以下に、概要 を示す。 
 
1.吸入曝露装置 ホルムアルデヒド吸入曝露装置は昨年度までの実験に使用したものと同様である。

装置は ホルムアルデヒドガス発生装置と、曝露チャンバーとから構成されている。

また、トルエン 吸入曝露装置は、トルエン蒸気発生装置と曝露チャンバーA、Bの 2 基とから構成されてい る。 
 
2.行動毒性における影響 低濃度ホルムアルデヒド曝露によりくしゃみの増加がこれまでに観察されたが、今回の 50 ppm トルエン濃度ではくしゃみの誘発はみられなかった。

トルエンの曝露指標として、尿中 代謝産物である馬尿酸を測定した結果、曝露直後には高いレベルを示したが、翌日の曝露直 前には正常レベルに戻っていた。 
 
3.低濃度のホルムアルデヒドに長期曝露されたマウス嗅覚系の形態学的解析 化学物質の低濃度長期曝露による嗅覚系ニューロンに与える影響を調べるため、これまで に明らかになった嗅球ニューロンへの解析を追試し、さらに嗅覚系大脳辺縁系における解析 をおこなった。

このために、ホルムアルデヒドに 3 ヶ月間連続的に曝露したマウスの嗅球お よび大脳辺縁系を形態学的に解析した。

また、さらにアレルギーモデルに対する影響をも比 較検討した。嗅球の解析では、嗅球糸球体に存在するドーパミンニューロンを観察した結果、 0ppb(対照)群に比べて曝露群で陽性ニューロンの数が多くなることが確かめられた。

嗅球 におけるドーパミンニューロンの機能は明らかでないが、GABA と共存することから抑制性 ニューロンとして、刺激依存的に増加し嗅覚情報を調節していると考えられる。

また、アレ ルギーモデルとして作成した卵白アルブミン投与マウス群では、有意の差は認められなかった。

大脳辺縁系の解析では、扁桃体におけるホルムアルデヒド曝露の影響を調べるため、Ca 2+結合タンパク質の Parvalbuminn と Calbindin の発現を免疫細胞化学的に解析した。

その結 果、扁桃体皮質核では、Parvalbumin および Calbindin 陽性ニューロンが曝露群で多くなる傾 向が認められた。

扁桃体におけるこれらの陽性ニューロンは GABA と共存する抑制性ニュー ロンであるとの報告があり、扁桃体においても、ホルムアルデヒド曝露により抑制性ニュー ロンの活動が高まっていることが示唆される。

また、アレルギーモデルマウスで、Parvalbumin および Calbindin 陽性ニューロンが多くなる傾向を示した。 以上、嗅球のドーパミンニューロンおよび大脳辺縁系の扁桃体 Ca2+結合タンパク質陽性ニューロンが曝露群で増加している結果を得た。

これらのニューロンは抑制性の機能を有する。 

持続的に刺激が嗅覚系に入力するため、これを抑制する必要から、抑制性ニューロンの活動 が高まり、この結果、共存するドーパミンや Ca2+結合タンパク質の発現も増加し、この免 疫染色陽性ニューロン数も増加したものと思われる。