41:2005年3月 デンマークEPAの報告書多種化学物質過敏症 MCS | 化学物質過敏症 runのブログ

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8 MCSは当局によりどのように扱われているか
8.1 アメリカとカナダ

8.1.1 法律と認知

アメリカにおけるこれまでの活動の概要

 Annex E は、3つの主要な目標に関し、当局及び私的組織によってとられた措置と取り組みの概要を示している。

3つの目標:MCSの原因に関する研究、社会的立法措置によるMCSの承認、及び、1979年~1996年までの防止のための取り組み。

Annex E に関し:

 政治家、裁判所、及び当局は形式上、MCSを認知しており、現在の法はMCS患者に対し様々な社会的恩恵を与えている。

このことは、いくつかのアメリカの州における裁判所の裁定を通じて効力を得ている。

カリフォルニア上級審は、ある人の病気(MCS)は、長年にわたるPCBへの曝露によって生じたものであり、彼は補償されるべきであるとした。

 1989年、アメリカ社会福祉局(Directorate of Social Services)は障害者手当ての支給対象となる病気のリストにMCSを載せた。

殺虫剤の匂い散布の警告システムの一部として、アメリカの10の州が、”殺虫剤に過敏な人々の登録”を確立するための法案を通過させた(Langley, 1995)。

 医師等や科学界は当初、MCSに関連する研究に反対し、又は参加することに躊躇した。

カリフォルニアでは、当地の医学会が、州議会を通過したMCS研究に関する法案に反対したので、知事が最終的にはそれを廃案にした。

国立科学アカデミーの下の環境科学毒物委員会はMCSの研究を実施するようにとのアカデミーからの勧告を実施しなかった。

1990年から医師等のグループは政府の活動に積極的に参加するようになり、それらのほとんどはアメリカ毒性物質疾病登録機関(ATSDR)を通じて行われた(第3章 参照)。

 1994年、ワシントン州政府は化学物質病の診断と治療のためのいくつかの医療センターを設立した(Langley, 1995)。

この取り組みは、例えばMCSのような研究のための140万ドル(約1億5,000万円)の科学基金によって実施された。

 MCSに関する最近の重要な政府の活動は、MCSに関する現状の知見の報告書を作成するために、部署間にまたがるタスク・フォースを設立したことである(Interagency rapport, 1998)。

現在の実施状況

 外部環境に責任があるアメリカ環境保護局(EPA)は、MCSに関する問合せをめったに受けていない。

 アメリカEPAは、長年MCS研究プロジェクト、特に屋内空気汚染について深く関与してきた。

アメリカEPAの行政上の焦点は法律や他の管理活動よりも、むしろ主に情報の流布に向けられている。

 アメリカEPAは、保健当局及び毒性物質疾病登録機関(ATSDR)の長年にわたるMCS研究の支援のために密接に協力してきたが、現在、化学物質とMCSに関する新たな計画はない。

国立労働安全衛生研究所(NIOSH)

 労働環境に責任あるNIOSHは毎年、無料の情報サービスを通じてMCSに関する数百の問合せを受けている。

NIOSHはMCSに関する情報刊行物を出しており、従業員、管理者、又は当局からの要請があれば職場の環境評価を行う。

MCSに関する新たな活動はない。

カナダ、これまでの活動

 二つのケースについて、オンタリオ州保健当局とカナダ自治領政府はMCS研究に取り組み、同時に1985年と1990年にMCS患者を支援した(Annex E 参照)。

 カナダ環境医療第一部門は、1990年代の初めにノバスコシア州に設立された。

2年の間に、地方の病院から500人以上の従業員が屋内環境問題のために診察を受けた。

7ヶ月の間に多くの人々がMCSを含む化学物質過敏症を進展させた。

ほとんどの意見が、匂いが最も共通な引き金物質であるということであったので、保健当局は病院の管理者及び労働組合と協力して、病院内では香水と香気含有製品を禁止した。

この禁止は”自主的な取り組み”で行われ、成果を上げた(Fox, 1999)。

 後に、いくつかの学校と公共輸送機関で同様な取り組みが行われた。香水製造と流通業者の組合は、MCSの原因が証明されていないという理由で学校での香水禁止に反対した。

推進グループは、匂いは屋内空気質を劣化させ、子どもをぜん息にする可能性があり、そのことはノバスコシア州では一般的であるという事実を指摘した。

この禁止は効果的に実行されなかった。

多くの学校では、自分たちで匂いのない環境を推進しその取組みからよい経験を得た。

 これは、カナダにおいて労働組合と人々の参加の下に、MCSを防ぐための地方分権的、分野横断的、及び部署横断的取り組みのひとつの例である。

入手可能な背景を示す文書によれば、カナダ当局は香気に焦点をあわせることで防止に努力している。

カナダ保健省(Health Canada (HC))、現在の実施状況

 保健当局は3つの環境病(MCS、慢性疲労症候群、及び、線維筋痛症)について、たとえその存在が客観的に証明されていなくても、認知する意図がある。認知プロセスの一部として、患者団体は香水産業及び医療専門家たちと会議で会う予定であった。

しかし、患者団体は産業界と会うつもりはなかったので、カナダ保健省はこの計画をあきらめた。

 カナダ議会の委員会は、多くの人々がMCSで苦しんでいるという社会的問題を解決するために、MCSを病気として認めさせるよう圧力をかけている。

 オタワの都市評議委員会はMCSを防ぐために、殺虫剤の個人使用を制限する地方の取り組みを支援した。

 香水と化粧品の産業界及び流通業者は、MCSと匂いとの関係についての文書化されていない疑わしい証拠に基づいて化粧品業界を閉め出すことに警告を発する情報キャンペーンを打ち上げるために、アメリカの同業者とパートナーを組んで共同団体を設立した。

8.1.2 結論

 アメリカとカナダでは、MCS患者への補償と社会的な問題に州(state and province)レベルで対処する方法が見出され、治療施設が設立された。

 アメリカの中央当局はMCS関連の医学研究に参加、支援し、彼等は積極的にMCSに関する情報を広めた。

しかし、背景を示す文書によれば、MCSへの関心は減退している。

当局は現在、湾岸戦争症候群の方に焦点を合わせている。

 カナダでは、保健当局はアメリカにおけるよりも環境病の認知の”正常化”に目を向けているように見える。

MCS研究に関する新たな取り組みはなされていない。

カナダ保健省は、香水と化学物質製品に関する規制を強化するための提案を準備中である。

そして、環境当局とともに、カナダ保健当局は予防のための地方での取り組みに参加している。

 アメリカとカナダにおけるMCS患者のほとんどは、もちろん、両国に広がっているいわゆる臨床環境センターで診察され、治療されている。詳細な情報はないが、カナダの多くの臨床環境センターは、アメリカにおけるよりも既存の保健行政と密接に協力している。

 カナダの患者組織は、匂いのない環境のための行動になんらかの成功をしているように見える。