105;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・10.1.3. オフィス、学校からの相談への対応での注意事項
一般住宅とは違い、建物(オフィス、学校等)はビルとしての特徴を持っていることを踏まえた対応が必要になります。

一般住宅では家族のうちの 1 人だけから症状の訴えがあることはよくありますが、ビルでの発症では複数名の体調不良が出ることは珍しくありません。新築ビルの場合、使用し始めて間もなく症状の訴えが出てくるのが一般的です。

新築直後に室内空気中のアルデヒド類、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound: VOC)を測定すると極めて高い値が出ることがありますが、空調システムを作動させることでほぼ問題のない空気環境になるのが普通です。

しかし、それでも室内の環境が改善しないとなると、建材、床材、壁材、施工法、その他什器や空調設備の不具合なども視野に入れた検討が必要になります。
近年の新築ビルは建材中のホルムアルデヒドの発散量に関する等級区分が作られ、等級によって使用面積の基準が設けられていますので、大きな問題は生じなくなりました。

一方、わが国のビルでは 2-エチル-1-ヘキサノールによる室内空気汚染の報告がありますが、これは新築や改修後長期にわたり床からの持続的なVOC 発生がみられるという特徴があります。

原因は乾燥が不十分なコンクリートと可塑剤含有の塩化ビニル材との直接接触ですが、このような場合には床材と建物構造にコンクリートを使用しているという情報及び施工時期などが重要な情報になります。

また、ビルの場合はメンテナンスや管理を専門の会社に委託していることもしばしばあり、その会社との契約内容や管理の実情などもチェックが必要になります。

学校の場合は校内の換気は職員はじめ児童生徒が行うのが普通です。また、窓もいわゆるはめ殺しではなく、ほとんどの場合、手動で開閉しますので、換気の状態は窓の開け閉めの影響を受けることも考慮する必要があります。
10.1.4. 症状が典型的でない場合
マニュアル通りの症状とそのきっかけとなる新築や改修工事、生活習慣があれば比較的容易に訴えの症状がシックハウス症候群であることはわかります。

しかし、このようなわかりやすい例はむしろ少なく、ご本人も周囲の人たちも体調不良の原因がはっきりせず、室内にいることとの関連が漠然と感じられるという程度のものであることがしばしばあります。
また、上述したように相談者自身のシックハウス症候群に対する理解が十分でない場合もあり、いわゆる化学物質過敏症の状態をシックハウス症候群と同じものとしてとらえている場合も少なくありません。

化学物質過敏症の場合には問題となる室内を出ても症状の改善がないこともある一方、必ずしも室内にいるときに症状が出るとは限りません。さらに、化学物質へのばく露と相前後して、メンタルヘルス上の問題が重なるとシックハウス症候群と同様の頭が痛い、なんとなく気分が悪いなどの症状が現れることがあり、ご自身は自らの症状をシックハウス症候群ではないかと考えることにもなります。

このような相談を受けた場合にはひとまずシックハウス症候群として原因を考えることにはなりますが、結論が出るに至らず、相談者にとっては不満の残る結果になってしまうかも知れません。
相談機関としては相談に来られた方々に対しては他の機関へ回ってもらうことなく、その場で解決の道を示すこと、いわゆるワンストップのサービスができることを目標にしなければなりませんが、背景に室内空気環境以外の要因が関連していることが疑われる場合にはシックハウス症候群に対応できる医療機関を紹介することも必要になります。