・7.2.2. 学校建築物のメンテナンス
学校の校舎に設置されている換気空調システムに付属するダクト、フィルターなどにはメンテナンスが必要になります。
これを怠った場合、十分な換気が行われない、様々な微生物によって室内の空気が汚染されるなどの室内空気環境上の問題が出てきます。
これらの設備の定期的点検、清掃は良好な室内環境を維持する上で不可欠なものと考えなければなりません。
学校の場合は授業に支障のないように年間計画を立てて、これらのメンテナンスを確実に行うことが必要です。
なお、学校内の定期清掃を外部の業者に依頼する場合、清掃と同時に床のワックスがけを行う場合があります。
シックハウス症候群の原因としてワックスから発生する化学物質が挙げられています。
使用するワックスについて業者と打ち合わせを行い、VOC の発生を最小限にするか、ワックスがけを行わないという選択肢も検討対象になります。
7.2.3. 授業及び課外活動など化学物質は理科や化学の実験など授業で使用することがあります。
その際はとりわけ、火傷、薬傷、皮膚ばく露など安全面の配慮は欠かすことができませんが、揮発性を有する有機化合物の使用にあたっては、シックハウス症候群の発症にも注意する必要があります。
通常、学校教育の場で VOC の発生を伴う実習などは行っていませんが、燃焼などに伴う排気の処理については細心の注意が必要です。
安全のため、ドラフト内での作業が求められる場合には、排気の操作も含め、教育に際しては十分な注意をしなければなりません。
教員として児童生徒の安全と衛生には大きな責任があります。
教育の活動がシックハウス症候群の発症につながることのないように常に注意を払うことが求められます。
理科、化学などの実習室の隣には通常、実習準備室があり、実習で使用する様々な試薬や VOC の発生があり得る化学物質関連の物品が保管されています。
これらの管理は担当の教員が責任をもって行っていますが、時にチェックが行われず、担当者に任せきりになると、管理がずさんになることもあり、試薬瓶のラベルが剥がれる、フタの破損・紛失、長年使用されない試薬が廃棄されないなどの問題が起こることがあります。
このような状態は、直接シックハウス症候群の発生につながるものではありませんが、思わぬ事故、化学物質の漏えい、放散につながります。同様の問題は理科・化学実習準備室のほか、消毒薬などの薬剤が保管されている保健室、塩素剤が消毒に使用されるブール及び関連施設、消毒剤・殺菌剤等が使用される調理室、日常的に営繕作業を行うための倉庫でも起こりえます。
化学物質管理の専門家である学校薬剤師との連携をとりつつ、ときどき学校内の物品管理のための巡視を行うなどしてチェックを怠らないようにしましょう。
また、学校では課外活動や体育祭・文化祭などの行事で、普段の授業ではほとんど使用することのない化学物質を含む様々な材料や薬品を使用することもあります。
例えば文化祭や学園祭でモニュメントや張りぼてなどを作ることになれば、まとまった量の塗料や接着剤を使用することもあります。
これらの使用に際しても児童、生徒、学生らには教員が注意を喚起しておかなければなりません。
新築の校舎での問題はすでに述べましたが、学校の場合には、時にまれにしか使用しない部屋を使用することがあり、換気が不十分なまま使用を始めるとシックハウス症候群の発症を招くことがあります。
どんな部屋でも使用前に十分な換気をしておくことは教員全員にとっての基本事項と言えます。