74;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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6.2.2. 塗料 

建築現場においては、外装・内装を問わず様々な塗料(JIS にはK5658 建築用耐候性上塗り 塗料、K5960 家庭用屋内壁塗料(かつてのK5961 家庭用屋内木床塗料、K5962 家庭用木部金 属部塗料も統合)、K5970 建物用床塗料など)が用いられます。

建築基準法の規制対象であ るホルムアルデヒドについては当初からF☆(スター)規格に則った表示がされて対策が進ん でいますが、塗料に特有な「安定した塗膜を形成・保持する」ための様々な成分が、用途や施 工要求に応じて配合・添加されており、一律の表示や規制は馴染まないと考えられています (水性塗料を除く)。 

社団法人日本塗料工業会では 2005 年より、主な揮発成分である芳香族溶剤(トルエン、キ シレン及びエチルベンゼン)をそれぞれ重量比 0.1%以上含まない製品に統一的に「非トルエ ン・キシレン塗料」の表示を行う活動を行っています。

これは原材料情報に基づく配合計算値 (SDS)或いは既定の測定法により判定するものですが、各社の自主判定に基づくもので義務 的なものではありません。

さらに 2006 年からは溶剤組成・塗装方法などの改良により VOC 成 分が 30%以下の溶剤型塗料に「低 VOC 塗料(溶剤形)」の自主表示を行う取り組みも行って います。

環境省資料によると塗料からの VOC 大気放出は平成 12 年からの 10 年で 40%以上減 少しています。 

6.2.3. 接着剤 

接着剤も施工時に一般に揮発が生じますが、ホルムアルデヒドについては JIS または日本接 着剤工業会の自主規格 JAI-16:接着剤成分試験方法‐接着剤中の揮発性有機化合物(VOC)の 測定等により格付けと表示が行われています。

また、住宅設備については後述の「建材からの VOC 放散速度基準」に準じた「JAIA 4VOC 基準適合」の制度にも対応しています。なお、130 m²の住宅には 200 kg以上の接着剤が使用されているとの報道があります(接着剤新聞 2010.1)。 

6.2.5. 家具・住宅設備 

容積或いは負荷率の制約から上述の小型チャンバー法での測定が困難な対象については、 JISS1911「建築材料などからのホルムアルデヒド放散測定方法-大型チャンバー法」が適用さ れています。

大規模な測定施設を要するため、特異な試験室、空気供給源、捕集システムや養 生・処理のプロトコルが規定されました。

一方、揮発性有機化合物(VOC)に対しては A1912 「建築材料などからの揮発性有機化合物(VOC)及びホルムアルデヒドを除く他のカルボニル 化合物放散測定方法-大型チャンバー法」が適用されます。 

JIS の環境整備を受けて、2008 年に財団法人建材試験センターに事務局を置く「建材からの VOC 放散速度基準化研究会(委員長:村上周三)により「建材からの VOC 放散速度基準」が制 定されました。

これに基づき(一社)日本建材・住宅設備産業協会、(一社)リビングアメニ ティ協会、キッチン・バス工業会、全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会、日本プリン ト・カラー合板工業組合の 5 団体が、同基準への対応を目的とし、業界の自主的取組として 制定したのが「住宅部品 VOC 表示ガイドライン」です。

対象は「木質建材の VOC 放散性能判断の ための根拠」に示されている材料、木質建材等から構成される住宅部品(設備機器・建具・収 納等)、具体的には、キッチン、洗面化粧台、カップボード、内装ドア(引戸・折戸を含む)、 開閉式間仕切り、クローゼット扉、据置収納、玄関収納、掘りこたつ、天井収納用梯子、屋内 階段等としています。会員企業は、構成材料に関する業界団体の表示制度への登録を行ったう えで、製造者等は管理規程と構成材料を照合できる品質管理体制を整えるほか、ユーザーから の開示請求に誠意をもって応えること、「4VOC 基準適合」と表示することなどが規定されて います。 

  http://www.kensankyo.org/kankyo/4voc/voc_hyojigaidrain_kaisetu.pdf

6.2.6. 防蟻剤 

防蟻剤は厚生労働省の指針値対象にクロルピリホス、ダイアジノン、フェノブカルブが登場 するなど、シロアリ対策のため木造住宅等の床下に散布・施工される薬剤です。構造を担う木 材が食害されると生命・財産の危険にもつながるため非常に重要な役目を負っていますが、ク ロルピリホスは微量でも毒性が大きいことから、床下から室内や近隣へ輸送されるおそれがあ るとして建築基準法で使用が禁止されました。シロアリ対策の効果と安全性は、適切な薬剤の 選択と、的確な調査・施工能力にかかっており、公益社団法人日本シロアリ対策協会が薬剤認 定、工法・材料や検査員の登録を行っています。 

今日では薬剤を用いず、細メッシュを用いる方法、基礎断熱として床下を遮断する方法など の物理的対策も提案されていますが、必ずしも普及していません。

新しい防蟻法としてはシロ アリが好む餌を仕掛けて定期的に観察し、検知した時点でベイト薬剤(対象虫獣鳥等を誘引し 給餌して駆除する薬剤)に取り換えて退治するシステムがあります。

こちらは薬剤の放散・流 出の恐れが少なく、近隣環境にもペットにも安全と謳われていますが監視や設置に手間がかか るためやや高価です。