20;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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b. 微生物由来揮発性有機化合物(Microbial VOC: MVOC) 

微生物由来揮発性有機化合物 MVOC は、微生物の二次代謝によって産生される揮発性有機化合物の 総称です。真菌の培養によって 150 種類以上もの MVOC の産生が報告されていますが、2-メチル-1- ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-ペンタノール、1-オクテン-3-オール等のアルコール類、 2-ヘキサノン等のケトン類、2-ペンチルフラン、3-メチルフランなどのエーテル類が主な MVOC とし て考えられています。なお、1-ブタノールはシンナーや塗料にも含まれますし、テルピネン-4-オー ルやリモネンなどは真菌のほか植物からも産生され、香料としても用いられます。

従って、発生源 が微生物によるものか、あるいは微生物以外の植物や、建材や日用品によるものかは明確に区別で きない物質もあります。

また、現在のところ室内測定項目の中に MVOC が含まれることは一般的では ありません。 

MVOC のうち、1-オクテン-3-オールや 3-メチルフランは、実験的に人にばく露させた研究があり ます。

その結果、鼻粘膜への刺激および鼻汁中の好酸球カチオン性タンパク質、ミエロペルオキシ ダーゼ、等の炎症マーカーが増加したことが示されています。

日本の戸建て住宅における疫学研究 では、1-オクテン-3-オール濃度が高いことが、シックハウス症候群のうち鼻・眼・喉の粘膜への刺 激症状へのリスクを 4.6 倍上げる結果を示しました。またシックハウス症候群のみならずアレルギ ーについても、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎のリスクをそれぞれ 4.1 倍、3.5 倍上げる ことがわかりました。

これらの関連は、室内総真菌量から外気の影響が大きい Cladosporium 属を除 した値で調整しても変わらなかったことから、MVOC と真菌量はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結 膜炎への独立したリスク要因でした。

海外では、スウェーデンで行われた疫学研究でも、1-オクテ ン-3-オール濃度が高いことが居住者の粘膜への刺激症状のリスク要因となること、学校での MVOC ばく露が子どもの喘鳴や夜間の呼吸困難のリスク要因となることが報告されています。

しかし、前 述したようにシックハウス症候群の訴えがあったときに室内の MVOC 濃度を測定することは一般的 ではありません。

室内の MVOC 濃度は壁や窓に結露がある家でない家よりも高く、また室内総真菌量 から外気の影響を受ける Cladosporium 属の真菌量を除した値と共に正の相関をしています。

従って、 まずは MVOC の発生源となるカビなどの微生物の室内での生育を防ぐことが一番です。

結露により、 例えば壁紙の裏や床下にカビが発生している可能性があるので、室内の通気を良くして積極的に換 気をし、ダンプネスを防ぎ、カビをはじめとする微生物の発生を抑えることが推奨されます。