・市街地における農薬散布と環境・健康の問題
(1)まず、9月議会の市長答弁を受けて始められたアメリカシロヒトリ等樹木害虫の捕殺防除体制の見直しに関してお尋ね致します。
金沢市が30年間続けてきた薬剤散布方式から捕殺防除を基本とする方式に転換したのが2001年度。
当時の経過を紐解けば、このような環境に配慮した防除方式への転換は、長年薬剤散布に依存してきた本市にとっては、画期的な転換であり、一大英断でもあったと思われます。
そこでまず、こうした経過を経て実施された薬剤散布から捕殺防除への転換の意義をどう受け止めてこられたか、改めて市長の所感をお聞かせ下さい。
次に、今回の見直しには、捕殺防除が難しい、有効ではないとの苦情や、薬剤散布を求める声が町内会等地域から上げられてきたことが背景にあると側聞しています。
他都市での経験によれば、こまめな観察と状況調査に基づく的確な捕殺は、野放図な薬剤散布より効果が高い上、数年後には薬害による生態系の破壊から復活する天敵の補食が活発化するなど、自然の力により深刻な樹木の食害は防がれると言われています。
金沢市の場合、27年間という長年の大量散布後のわずか3年間の推移であることを考慮し、捕殺防除は有効ではないとの評価を拙速に下すべきではありません。
先月立ち上がった「都市樹木害虫防除検討会」では、捕殺防除を引き続き基本とするものの、薬剤散布の条件づくりに向け合意されたと聞きます。
中心的に検討すべきは、薬剤散布の安易な再開ではなく、捕殺防除の実効性を高めるための制度、社会的弱者に配慮した協力体制、財政、制度を周知する広報の充実ではないでしょうか。
そこで、見直しの趣旨と具体的内容について、都市整備部長の見解を求めます。
(2)次に、農薬による健康被害を防ぐと共に、患者の人権を守る観点から述べさせていただきます。
市内在住の化学物質過敏症患者の方から直接話を伺う機会がありましたが、近隣での薬剤散布時期に発疹が悪化し、うつ症状の全身倦怠がすすんで炊事の気力さえ出てこない苦しさを訴えられました。
しかも、空気を通じた農薬吸入がこうした苦しみをもたらすことは健康者には理解し難く、偏見が注がれたり、大げさだと取り合ってもらえないなどの対人関係の苦しさも重なってきたと述べられました。
2002年度に至ってもOECD加盟国平均の6倍もの農薬が使用されているという世界最大規模の農薬大国日本を尻目に、海外で農薬の毒性に対する研究はすすみ、認識は深まっています。
特に注目すべきは、米国科学アカデミーなどの1990年代からの研究により、胎児、子どもは特に影響を受けやすく、神経発達障害、免疫機能不全、ガン、アトピー昂進を生じる可能性があり、子どもたちへの安全基準は10倍強化されるべきと提起されてきたことです。
そうした結果、カナダでは農薬の神経毒性を重視し、昨年、農薬使用を厳しく規制する「有害生物駆除製品法」が成立、EUでも今年、農薬再評価の結果300種類以上の有機リン系をはじめとした農薬が失効することになっています。
日本でも、ようやく今年9月に農水省の通知「住宅地における農薬使用について」が出されました。
そこでは、農地を含め病害虫駆除は農薬にたよらない方法で行い、やむなく使用する場合の使用量削減、住民・子どもに健康被害を及ぼさない具体的な努力を求めています。
加えて、健康被害への相談窓口を設置するなど適切な対処も求めています。
そこで、関係当局にお尋ねします。
まず、農薬の毒性を理解し、脱農薬に向かう市民意識を啓発する広報、地域での講習、教育のあり方を検討すべきと思いますが、如何でしょう。
2点目として、健康被害と社会的偏見に苦しむ患者救済のための相談体制は、福祉保健部、環境部、都市整備部さらには農林部、教育委員会など部局連携の体制が必要だと考えます。
現状と今後の方向についてお答え下さい。
3点目に、シックスクール対策並びに校地内での害虫駆除に関わる農薬被曝を防ぐ対応をどのように行ってきたのかについて教育長にお尋ねします。