キシレンの経気道吸入暴露によるマウス行動影響解析 | 化学物質過敏症 runのブログ

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/43.1/0/43.1_O-17/_article/-char/ja/
キシレンの経気道吸入暴露によるマウス行動影響解析
*種村 健太郎1), 古川 佑介2), 北嶋 聡2), 菅野 純2) 3)

1) 東北大学大学院農学研究科動物生殖科学分野 2) 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 3) (独)労働者健康安全機構・日本バイオアッセイ研究センター

公開日 20160808 
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抄録

 建築素材の改良、住居の気密性向上から、住宅における微量の化学物質を原因とするシックハウス症候群(SHS)が問題となっている。

SHSの症状のひとつとして疑われる影響に中枢影響が挙げられるが、これまでの吸入毒性試験ではSHSの指針濃度を遙かに超える暴露濃度で行われることが多く、毒性情報のヒト中枢影響への外挿が非常に困難であった。

こうした問題に対応すべく、我々はSHS指針濃度程度の経気道吸入暴露系の開発と、経気道吸入暴露後の中枢影響としての情動-認知行動解析系の構築を行っている。
 今回、我々はキシレン(0、2.0 ppm: 2.0 ppmは指針値の10倍濃度)について、22時間/日×7日間反復暴露を生後11週齢の雄マウス(成熟期)に実施し、生後12週齢時の情動認知行動について、オープンフィールド試験、明暗往来試験、条件付け学習記憶試験により解析した。

その結果、暴露終了日に実施した際には、条件付け学習記憶試験による空間-連想記憶能及び音-連想記憶能の低下が認められた。

一方、暴露3日後に実施した際には全ての試験に有意な変化は認められなかった。

この結果から、キシレンの経気道吸入暴露により学習記憶異常が誘発されるが、それは可逆的なものであると推察された。
 加えて、生後2週齢から3週齢時の雄マウス(幼若期)にキシレン(0、2.0 ppm)を22時間/日×7日間反復暴露を実施し、成熟後12週齢時に上記の行動解析を行った。

その結果、条件付け学習記憶試験による音-連想記憶能の低下が認められ、早期の経気道吸入暴露によって記憶異常の顕在化が誘発されることが明らかとなり、脳発達過程への不可逆的な有害性が示唆された。
(本研究は厚生労働科学研究費補助金:H26-化学-一般-001によるものである。)