アレルギー性疾患への環境化学物質の影響8 | 化学物質過敏症 runのブログ

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環境化学物質のアレルギー 
環境化学物質のリスク評価は急性毒性や発がん性、人々の生命や生活の質(QOL)と密接に関係し得るアレルギー性疾患に対し、
■世界では
ディーゼル排気微粒子(DEP)やフタル酸エステル類といった環境化学物質のアレルギー反応に対する影響評価が進みつつあります。
まず DEP では、イランのグループが、DEP に含まれる化学物質の 1 つであるベンゾピレンがマウスの食物アレルギーを相乗的に増悪することを動物実験で確認し報告しています。

また、米国カリフォルニア大学は 1997 年に、アレルゲンのみと、アレルゲンと DEP0.3mg の混合物を花粉症患者に点鼻投与し、引き起こされるアレルギー反応を比較検討する実験を行っています。

この実験の結果、同患者の鼻腔局所でDEP がサイトカインを基点とした免疫応答を変化させ、アレルゲン特異的 IgE 抗体の産生を亢進することを明らかにしました。
フタル酸エステル類については 2004 年、スウェーデン国立試験研究所が、室内に存在し得る濃度のフタル酸が子供のアレルギー症状の発現と相関することを示しました。

アレルギー性鼻炎と診断された小児が居住した、室内のフタル酸ブチルベンジル(BBzP)濃度は、鼻炎のない小児の室内の BBzP 濃度と比較して高いというものです。

室内の BBzP 濃度は鼻炎、皮膚炎の罹患との相関性がある一方、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)の濃度は喘息との相関が強いことを公表しました。

さらに、これら 2 つのフタル酸エステルの室内濃度が高いほど、小児のアレルギー症状発現との相関がより強くなると報告しています。
動物を用いた実験では、DEHP あるいはその代謝産物が、アレルゲンを投与したマウスにおいて血中の抗体やサイトカインなどの産生を増強するという報告がいくつかなされています。

加えて、DEHP の代替物質として使用されているフタル酸エステルにおいても、アレルギー反応を亢進し得る可能性を指摘する報告もあります。

さらに、高濃度の DEHP 曝露がアレルギー性気道炎症を増悪することが、最近、デンマークのグループから発表されました。
DEP やフタル酸エステル類以外では、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、DDT、ビスフェノールAなどでもアレルギー反応に対する影響評価が進んできています。

例えば、ビスフェノールAを含んだ高密度なビニール手袋をはめたことで職業性接触性皮膚炎(かぶれ)を発症した、という例も報告されています。
■日本では
DEPのアレルギーへの影響は、日本でも国立環境研究所以外に日本医科大学、聖マリアンナ医科大学、筑波大学などといった研究機関で研究されています。
日本医科大学は東京大学や結核研究所と共同で、マウスに低濃度のディーゼル排気 (DE) を長期間曝露した際の、喘息の発症への影響を検討しました。

環境中でもあり得る濃度100μg/m3 のDE をマウスに1日7 時間、週 5 日の条件で 3 カ月間曝露させた後、アレルゲンにて喘息を発症させると、DE を曝露させていなかった喘息マウスと比較して、喘息の病態がより悪化していることが確認されました。
また、聖マリアンナ医科大学は東京大学などと共同で、スギ花粉症患者の白血球を用い、DEP が白血球に対して及ぼす影響を in vitro で検討しました。研究の結果、DEP はスギ花粉症患者の T リンパ球からTh2 サイトカインの産生を増強する作用を有することなどが明らかとなりました。

このように DEP は、アレルギー反応の種々の段階に作用し、アレルギー症状の発現・増悪に関与している可能性がわかってきています。
一方、DEHP を含むフタル酸エステル類のアレルギーに対する影響評価については、本号で紹介した例のほかに、静岡県立大学の研究例があります。

この研究ではフタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピルがマウスの接触性皮膚炎を増悪することを報告しています。