アメリカはなぜ、有害な化学物質を市場に出したままにしているのか? | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・In These Times 2015年11月2日
アメリカはなぜ、有害な化学物質を市場に出したままにしているのか?
バレリー・ブラウン、エリザベス・グロスマン

情報源:In These Times, November 2, 2015
 Why the United States Leaves Deadly Chemicals on the Market
 BY Valerie Brown and Elizabeth Grossman
 http://inthesetimes.com/article/18504/epa_government_scientists _
 and_chemical_industry_links_influence_regulations

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
 掲載日:2015年12月14日
 更新日:2015年12月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/articles/
151102_Why_US_Leaves_Deadly_Chemicals_on_the_Market.html


 6か月にわたる調査により、政府と化学産業界とをつなぐ回転ドアが、 EPA の容易に操作できる研究への依存をもたらしていたことが判明した。

その結果は? 有害物質が日用品の中に残ったままである。
内容
•導入

•生理学的薬物動態(PBPK)シミュレーションの黎明

•産業側に役立つツール

•広範な影響の網の目
•数十年間の致命的な遅れ
•BPA が警鐘を鳴らす
•PBPK と内分泌かく乱
•きわめて重大な論争
•科学から行動へ
 

導入


 科学者らは一般的に行動主義を敬遠するが、化学物質規制に関しては策謀と慣性でパンチを食らわせるために行動が必要であると多くが信じている。  
 科学者らは自身を合理的に表現するよう訓練されている。

彼らは意見が合わなくても個人攻撃を避ける。しかし、ある科学的な論争は非常に分極化して喧嘩になることがある。怒鳴りあうことすらあるかもしれない。

  そのような状況が二つの科学者のグループの間に見られる。健康影響研究者と規制毒性学者である。

両方のグループは人の化学物質暴露の影響を調査する。両方のグループは、他者の仕事を述べる時に、”的はずれな”、”恣意的な”、”根拠のない”、”蓄積された生理学的理解に反して”というような表現を公然と使用してきた。

非公開では、”似非科学、”宗教”、そして”いかさま”と、言葉はもっとどぎつくなる。

  意見の相違は、化学物質への暴露の健康影響を測定するための最良の方法ということの周辺に集中する。

規制側の毒性学者らは一般的に”生理学的薬物動態(PBPK)”モデル(訳注1)と呼ばれるコンピュータ・シミュレーションに依存する。

健康影響研究者-中でも内分泌学者、発達生物学者、及び疫学者-らは、化学物質が実際に生体にどのように影響を与えるかについての直接的な観察から結論を引き出す。

  論争は難解に聞こえるかもしれないが、その結果は直接あなたの健康に影響するかもしれない。

それは、政府機関が現在に至るまでの数十年間、どのように化学物質を規制しているのか、どのように有害廃棄物を浄化しているのか、どのように農薬は規制されているのか、どのように労働者は有害暴露から保護されているのか、そしてどのような化学物質が家庭用品中での使用が許されているのか-ということを具体化している。

これらの決定は、公衆の健康:がん、糖尿病、肥満、不妊、そして注意力欠陥症や低IQ のような神経系の障害の罹患率に大いに影響を及ぼすであろう。

  ある化学物質とこれらの健康影響の関連性は真実である。

今年の初めに発表されたある論文の中で、先導的な内分泌学者のあるグループが、ホルモンかく乱化学物質への環境的暴露は健康問題を引き起こすということを99%の確度をもって結論付けた。

彼らは、これは欧州連合健康管理システムに1,750億ユーロ(約23兆円)の負担をかけると見積もっている(訳注2)。

  国内に目を向ければ、アメリカ人は日常的にその健康影響が長らく知られている有害化学物質により病気にさせられている。

ひとつの悪名高い例を挙げれば、ハリケーン”カトリーナ”後に、米国緊急事態管理庁(FEMA)の避難用トレーラー・ハウスの中で発がん性が知られているホルムアルデヒドに暴露した人々は、頭痛、鼻血、及び呼吸困難の健康障害を被った(訳注3)。

数十人の発がん症例が後に報告された。そして職場での暴露があり、連邦政府は年間、2万人ものがん死亡と数十万人もの疾病との関連を推定している。    

”我々は、テストされておらず、安全ではない化学物質の世界にどっぽり浸かって溺死しそうになっており、我々の生殖健康という観点で支払っている金額に深刻な懸念を持っている”と、2015年10月1日に発表された声明の中で国際産婦人科連合(FIGO)は述べた(訳注4)。

  いまだにアメリカの化学物質規制の進捗はゆっくりである。

そして企業の利益が規制の中心にある。

  化学産業が政治的影響を及ぼしているということはよく報告されていることである。我々の調査が明らかにしたことは、30 年前、企業権益は政治的プロセスだけ

でなく、科学自体をもをコントロールし始めたということである。

産業は、知られている環境的健康ハザードに疑いを向けるための研究に資金を提供しただけでなく、有害化学物質のリスクを軽視するために科学の全分野に影響を及ぼした。

  我々の調査は、1970年代と198年代に国防総省(DOD)で働いていた科学者らのグループ-生理学的薬物動態(PBPK)の開拓者ら-に影響を及ぼすために仕組まれたたくらみを追跡した。

この種のモデリングは化学物質リスクの見かけを最小にするよう操作できることがすぐに明確になった。

その後、生理学的薬物動態(PBPK)手法は、当初の国防総省グループから産業界、政府機関、及び産業が支援する研究グループの間をしばしば不透明性をもって移動した多くの研究者を含んで、少なくとも二世代の研究者らによって推進された。

  その結果は、人の健康に有害であると知られている化学物質の大部分がアメリカでは規制されないままにおかれ、しばしば大変な結果をもたらした。一般的なプラスチックの成分であるビスフェノールA(BPA)やその他の内分泌かく乱物質のようなその有害性がやっと認められ始めた化学物質にとって、この規制の欠如は、連邦政府の化学物質見直しプロセスがもっと透明性を持ち、生理学的薬物動態(PBPK)モデリングへの過度な依存をなくさない限り、続きそうに見える。

  我々はここに、役者、対決の典型、そし悪くなる高リスク健康影響について示す。