・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・ScienceDaily 2016年11月2日
物理学者らが小さなナノ粒子の脂質膜通過を初めて観察し、定量化
出典:Global Oncology
情報源:ScienceDaily, November 2, 2016
First time physicists observed, quantified tiny nanoparticle crossing lipid membrane
Source: Global Oncology
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161102144304.htm
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2016年11月12日
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脂質被覆の疎水性金ナノ粒子は細胞膜を通過する。
ナノ物質は我々の日常生活で使用される製品の多くに含まれるようになった。それらは、化粧品(クリーム、歯磨き、シャンプー)、食品成分(砂糖、塩)、衣料品、建材、塗料、車のタイヤ、油、電子機器(スマートフォン、画面)、エネルギー、医療(薬品、医療画像)など、どこでも見つけられる。
経済協力開発機構(OECD)は最近、我々が人々や動物、そして環境にとって潜在的な毒性を無視している 1,300以上の商業製品中にナノ物質が存在すると報告した。
ナノスケール物質を監視するための信頼できるツールがないこと、そして可能性ある毒性のメカニズムの数が膨大であることが、ナノ毒性の規制に物議をかもしている。
(例えば、クリーム中のナノ粒子は人間の皮膚を通過しないが、肺や粘液層を通じて入り込むかもしれない。)
そのことが、あるナノ粒子が細胞膜を含んで人間の組織やバリアとどのように相互作用するのかについの正確なメカニズムがよく理解されない理由である。
その理由の一つは個々のナノ粒子を可視化することが非常に難しいことである。
実際にナノ物質は回折限界(diffraction limit)以下であり、したがって光学顕微鏡の限界以下である。
その結果、サブミクロンの世界の出来事を見るためには特別な独自の技術が設計されなくてはならない。
もう一つの難しさは小さな粒子に関連する。
それらは素早く動き、関連するプロセスはほんの一瞬しか持続しないので、測定も高速でなくてはならない。
これらの懸念に基き、 European Network ITN SNAL のコーディネータであるウラジミール・バウリン博士に率いられたロビラ・イ・ビルジリ大学(スペイン)の理論物理学者のチームが、ナノ粒子と細胞の脂質膜(lipid membranes)との間の相互作用を調べるために研究プロジェクトを立ち上げた。コンピュータ・シミュレーションで研究者らは、”完全な二重層(perfect bilayer)”と呼ぶモデルを最初に作り出したが(訳注1)、そこでは脂質尾部(lipid tails)の全ては細胞膜内の所定の位置に静止している。
彼らの計算に基づき、バウリン博士の研究チームは、もしサイズが細胞膜の厚さと同様ならば(約 5ナノメートル)、疎水性の小さなナノ粒子は脂質二重層の間にに入り込むことができることを観察した。
彼らは、科学界によって一般的に受け入れられているように、これらのナノ粒子が細胞膜中に留まることを観察した。しかし超疎水性(superhydrophobic)のナノ粒子の場合には驚くべきことが起きた。
これらのナノ粒子は細胞膜中に入り込むだけでなく、この細胞膜から自然に離れる(escape)ことができたのである。
”一般的に対象物質のサイズが小さければ小さいほど、より容易にバリアを通過するということが一般的に認められている。
しかしここでは逆のことを見た。サイズが 5nm より大きいナノ粒子は自然にバリアを通過することができる”とバウリン博士は言う。
バウリン博士は、このメカニズムを確認し、この独自の移行現象を実験的に調査するためにザールラント大学(ドイツ)のジャンバティス・ フルーリー博士に問い合わせた。
フルーリー博士と彼のチームは、リン脂質二重層(phospholipid bilayer)システムを作り出すために、微小流体実験を設計したが、それは人工細胞膜とみなすことができるものである。
使用された金ナノ粒子は脂質単分子膜を吸着させられていたが、それは安定した分散を確実にし、密集することを防止する。
光学的蛍光顕微鏡と電気生理学的な測定の組み合わせを利用して、フルーリー博士のチームは二層を通過する個々の粒子を追跡し、それらの分子レベルでの経路を明らかにすることができた。
そしてシミュレーションにより予測されたように、彼らはナノ粒子が脂質コーティングを人工細胞膜の中で分解することにより二層の中に潜り込むことを観察した。二層の典型的な厚さ(typical extension of a bilayer)である 6 nm 又はそれ以上の径を持つナノ粒子は、わずか数ミリ秒で再び二層から離れることができるが、それより小さなナノ粒子は二層の芯(core)の中に留まる。
小さな金ナノ粒子が細胞を保護しているバリアを通り抜けて素早く移行するという発見、すなわち 脂質二重層は、公衆の健康にとってのナノ粒子の安全性についての懸念を提起するかもしれず、一般にナノ物質の安全性への注意を払いつつ、ナノスケールでの安全規範を変えることを示唆するかもしれない。
出典:Global Oncolog。内容は編集されているかもしれない。
論文:Y. Guo, E. Terazzi, R. Seemann, J. B. Fleury, V. A. Baulin. Direct proof of spontaneous translocation of lipid-covered hydrophobic nanoparticles through a phospholipid bilayer. Science Advances, 2016; 2 (11): e1600261 DOI: 10.1126/sciadv.1600261
訳注1:細胞膜
(細胞膜/東京医科歯科大学 資料) ・・・次の図は、透過型電子顕微鏡写真で撮影した、接している2つの細胞の細胞膜である。
2枚の細胞膜の断面をよく見ると、電子密度が高い(黒い)二枚の膜が白い部分をはさんでいるのが見える。
電子顕微鏡の解像度をもってしても、これ以上、細胞膜の構造を明確にすることは困難であった。
そこで、いろいろな知見から細胞膜の構造を示すモデルが提出された。現在、最も確からしい細胞膜の構造について説明しよう。・・・
runより:細胞膜/東京医科歯科大学 資料はとても長いので図は省略します。
しかしコレよく考えたら恐ろしい事ですよ。
外側から脂肪を突き抜けて化学物質が入るという事ですしね( ̄_ ̄ i)