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ドクターitsukoのアトピーコラム
家庭内農薬についてⅡ
更新日:2014/09/02
理学博士 田中伊都子
目に見えない農薬とは?
慢性の蕁麻疹(じんましん)やアトピーなどの慢性皮膚炎など、日常生活での原因を考えてみましょう。
前回、家庭内農薬のピレスロイド系殺虫剤についてお話ししましたが、今回は、有機リン系殺虫剤を取り上げてみたいと思います。
サリンとほぼ同じ性質の殺虫剤も
有機リン系殺虫剤は、殺虫を目的とした農薬としてつかわれています。
地下鉄サリン事件のサリンやVXガスと同じ仲間で、サリンより毒性は残りにくいのですが、症状や作用部位などサリンとほぼ同じ性質をもっています。
分類の特徴として、「成分名」のカタカナに【--ホス】といった文字がつきます(ホスゲンは無関係)。
有機リン系殺虫剤は、化学兵器開発途中に考案されたものであり、虫を殺すことが目的ですが、人間にとっても有害であることを認識しなくてはなりません。
乗り物や公共施設でも普通に使われている
農業用、家庭園芸用の殺虫剤や殺菌剤、除草剤としてはもちろんですが、電車、バス、航空機、などの車内、機内の消毒など、私たちの身のまわりで使われています。
農薬への意識が高まり、無農薬の野菜を求める人たちが多くなりましたが、まさか、と思うようなところで、気がつかないうちに有機リンの暴露にさらされているのです。
人体に与える影響にはどんなものが?
本来は、即発型といわれる有機リンの毒性ですが、日々蓄積された毒性は、リソホスホリパーゼという酵素に直接ダメージを与えて、慢性中毒を引き起こすことがわかりました。
この酵素の働きが侵されると、狭心症や心筋梗塞の原因や、記憶障害、食欲の減退、うつ、睡眠障害さらに、子どもの多動障害の原因になることも指摘されています。
そのほかにも、さまざまな酵素の働きを阻害して、発がん性や催奇形性など人体へ影響を与える疑いや、大切な免疫機能にも悪影響を及ぼすことがわかってきています。
当然のことですが、アレルギーやアルツハイマーの原因になっているという研究者もいます。
農薬が体内に侵入する経路について
それでは、有機リン系殺虫剤は、どのような経路で私たちの体内へ侵入してくるのでしょうか。
◎ 輸入穀物、果物の残留
◎ 畳に使われた防虫シートからの揮発
◎ 床下の白蟻駆除剤使用
◎ カーテン等に難燃剤として使われた有機リン剤
などが考えられます。
最も身近な食物の問題で、収穫後の玄麦が日本に輸入される際のポストハーベスト農薬があります。ポストとは「後」、ハーベストは「収穫」を意味します。
すなわち外国産で「収穫後に、日本へ輸出する玄麦などの穀物や果物には農薬を散布し、船中での何か月もの輸送期間の間、腐敗することを防止している。」ということです。
日本では、収穫後の作物への農薬散布は禁止になっていますが、外国でも自国向けの農産物にはポストハーベスト農薬は使用禁止になっているのに、「輸出する穀物や果物には何度もポストハーベスト農薬を散布している」という実態があります。
家の中に潜む、意外な殺虫剤成分を含んでいる物
防虫畳には、有機リン系殺虫剤フェニトロチオン、またはフェンチオンを含んだ防虫シートが2~3枚敷きこまれています。
この上で生活することで、慢性的に有機リン系殺虫剤をあびることになり、アレルギー性疾患の悪化や、化学物質過敏症を発症してしまいます。
特に乳幼児は畳の上で生活する時間が長いため、大きな影響がでます。
このような物質は、畳の上30センチの所が特に濃度が濃いので、赤ちゃんを座布団にゴロンと寝かせるのはいけません。
殺虫剤以外では、建築資材のウレタンホームやアクリル樹脂など合成樹脂に難燃剤として、有機リン剤が使われています。
火災の時、類焼を防ぐための壁やカーテンですが、くつろぎのための生活空間に有機リン剤があると思うと、違和感をおぼえてしまいます。
アトピー患者は、自分で身を守ることが重要
東邦大学医療センター大森病院救命救急センターでは、家庭園芸用の有機リン農薬による自殺患者の治療に際し、治療にあたったスタッフに「有機リンによる二次被害と考えられる症状がでた。」との報告もあります。
マスクをしていても患者の呼気などから影響を受けるのです。
いろいろな問題のなかで、厚生労働省の健康局長が、「有機リンは脳機能に関係するさまざまな酵素の働きを低下させ、慢性の障害を引き起こす恐れがある」と答弁したのですが、現状はなかなか変わっていません。
化学物質が、免疫力低下や痒みの原因にならないよう日頃から気をつけたいですね。