総説:化学物質過敏症8 | 化学物質過敏症 runのブログ

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栄養学的パラメータ.
これを2つのグループで比較すると相違がある。

全員に測定がされたが、最も有意な差異は燐酸ピリドキサール(B6)とマグネシウムの血中レベルでの低下である。

血清脂肪酸、赤血球燐脂質の分析は各々のグループの9 名の患者で施行された。

6名の化学物質過敏症患者、5 名の対照群の患者にてェイコサペンタ工ン酸(EPA) 値の低下が観察された。

6名の化学物質過敏症患者、3 名の対照群患者においてはアラキドン酸(AA)の上昇が認められた。
29名の化学物質過敏症患者、20名の対照患者の尿中必須アミノ酸を定量的にダイエット後に測定した。

両者の日常でのダイエットは両群に特に差異はなかった。

最も興味深い点は化学物質過敏症患者では41 %と非常に高率に必須アミノ酸の排泄の減少が認められるが対照群ではわすかに5 %の患者にしかそれが認められなかった(し= 8.54 pく0.01 )。

必須ァミノ酸排泄低下を示した化学物質過敏症患者のうちの2名は正当な理由がないにもかかわらす低アルプミン血症を呈していた。

一人のアルプミンは3. lgm %でもうひとりは1.9gm %であった。

さらにどちらの患者も消化吸収障害や蛋白尿、肝疾患は一切認められなかった。
両方の患者とも数人すっ非特異性の腸障害を訴えていた。

しかしこれは他の排泄障害患者、さらに正常排泄をしている患者でもしばしば同じ事を訴えているので意味はないと思う。
赤血球活性酸素分解酵素(ESOD)を27名の化学物質過敏症患者と19名の対照者において測定している。

24名(89 % )の化学物質過敏症患者と、15名(79 % )の対照群患者においては前者で有意に酵素活性低下が示唆された。

ちなみにESODの平均値は化学物質過敏症群で7.40十2.44units/mg Hbであり対照群では7.85十3.43units/mg Hbである。
ESOD活性と血清中、赤血球中、尿中、毛髪中銅レベルでは関連はなかった。
赤血球グルタチオン過酸化酵素(EGPO)活性を23名の化学物質過敏症患者と14名対照群患者において測定した。

化学物質過敏症群の低EGPOを呈したものの割合と対照群でのそれを比べると48 %と36 %で明らかに化学物質過敏症患者が多い。

しかしこの差は有意ではなかった。

月旨質過酸化物を6名の化学物質過敏症患者2名の対照群患者で測定した。

4名の化学物質過敏症患者と1名の対照群患者において上昇が認められた(24・28)
これらの結果からGallandは次の考察を行っている。

すなわち、ます大切なことは、化学物質過敏症の問題は職業の定着性に関係がある。

対象にした患者の64 %が健康を理由に仕事を止めたり変えたりした。

しかし対照群ではそれはまったくなかった。

周知のごとく化学物質過敏症患者は高い確率で体力に何らかの障害を認める。

約1 /5に甲状腺疾患があり、重なってはいるものの1 /5に症候性僧冒弁逸脱症が認められた。

これらの頻度は対照群よりもやや化学物質過敏症群に多い。

さらに一般のうっ病患者の10 %以上に潜在的な甲状腺機能低下症があるといわれる。

甲状腺疾患の既往は恐怖心患者(cardio-phobic patients)では同じように一般的である僧冐弁逸脱症もパニック患者(panic disorder)では15 %前後に認められるいれ23 , 38)。

症候性弁逸脱症は自律神経の異常に関連があり⑤、それは過大な運動によって発作を引き起こすことがある。

したがって、潜在する甲状腺疾患や自律神経系異常の証明は化学物質過敏症患者に対しては症状を説明するという意味では最も価値のあるものと思う。

一般的に、化学物質から離れると、過敏状態が減少してきたと告げる必要もなく患者達は徐々に健康に戻っていく。
化学物質過敏症患者は複雑しかも多種類の生化学的な異常を呈する。

しかしそのほとんどはアレルギー疾患患者と同様で、特定の化学物質過敏症であるとする起因物質による特別な生イヒ学的特徴は少ない。

ここが診断の難しいところでもある。
燐酸ピリドキサールの低下は化学物質過敏症に少し多かった。

喘息患者で燐酸ピリドキサールの低下はしばしば見られる(3。)。

ダイエット喘息とは関係なかった。

しかしそのような喘息患者に、ピリドキシン200mg/day を投与すると回復するという報告もある。

今回の症例で、喘息はなくても、ピタミンB6の大量投与は化学物質過敏症患者の訴えを明らかに改善させた。

とくに燐酸ピリドキサールの低下のある患者ではそれが顕著であった。
マグネシウムの低下は化学物質過敏症で認められた。

これはアトピー患者のレ3がマグネシウム欠乏症であることとよく一致する⑧。

マグネシウムは免疫システムの重要なモデュレーターである( 12)。

その効果はアレルギー過敏状態の実験動物でも確認されている。

マグネシウムの補足は僧冒弁逸脱症患者の自律神経失調症状を和らげるのにも効果があった( 13)
化学物質過敏症患者の内の10名( 18 % )に経ロ的、または注射によりマグネシウム塩を投与したところ倦怠感、頻脈、不安、不眠症、知覚異常、筋肉の痙攣等の種々の症状が改善した。
必須脂肪酸の代謝異常は免疫異常の性質を持つアトピー性疾患の生化学異常で見られることがあるイコサペンタェン酸の低下は両グループの一般的な共通の特徴であった。

化学物質過敏症患者の一般的でない所見としてプロスタグランディン、ロイコトリエンの前駆物質成分であるアラキドン酸の回路レベルでの上昇がある。魚類の油から抽出したエイコサペンタェン酸の栄養学的供給は片頭痛、関節痛、喘息、無月経などの過剰なprostanoidに関連した症状抑制に効果があるとされる。

ここで紹介した化学物質過敏症患者の治療にも非常に有益である。

その理由は脂肪酸の利用は化学物質過敏症患者で低下しているトレースエレメントである銅(6)セレニウムい1 )などが栄養学的な正常摂取時に必要とするからである。

赤血球SODは銅を含んだ酵素である。

その活性は人間や実験動物において銅の動態の指標となる。

SODは障害された陰イオン活性酸素から炎症を限局化したり過酸化水素への変換作用がある。

その最大防御活性には過酸化水素から水への変換作用があるEGPOの助けが必要である⑦。銅欠乏はSOD活性を下げ代償的にEGPO活性を増加させるからである。EGP

Oはセレニウム動態の敏感な指標でもある周知のごとくEGPOは関節リウマチや炎症性皮膚疾患患者で欠乏している(34・35)。

対症的なセレニウム投与は上述した炎症性疾患の改善をきたす(33)。

化学物質過敏症患者ではSOD、EGPOともに一般的に低値である。

しかしその両者とも治療的な投与により改善可能で経ロ投与により常に正常値に近付き症状も改善する。
銅の欠乏状態では人間や動物で組織中や血中のアラキドン酸上昇を示すのは最も珍しい状態の一つである低SODレベルとアラキドン酸上昇は銅の欠乏が特に化学物質過敏症患者で著明である。

セレニウム欠乏(EGPOによって示されたカのはやはり両者のグループで有意差があった。セレニウムの低下は重金属その他の環境汚染物質による中毒時に多いが、一般に真菌感染の罹病率を増加させるといわれている。

化学物質過敏症患者と対照群患者間の決定的な相違は必須アミノ酸の異常な低排泄にあり、尿中アミノ酸分析の行われた40 %の化学物質過敏症患者に異常を認めた。

これはきわめて重要であり、最近の若者たちが、冷凍食品や、ハンバーグ等を多くとる現代社会では、一見高蛋白ダイ工ットにもかかわらすアミノ酸低排泄を見ることがあるのにはいくつかの原因が考えられる。
( 1 )体液成分からの蛋白漏出
(い障害されているシステム、臓器の修復、再生、成長等によるアミノ酸利用の増加
(3 )吸収不良、消化不良
( 4 )腎での再吸収増加
代謝の過程でこれら化学物質過敏症の患者は蛋白の異常な損失、何故生体が高蛋白需要が存在するのかははっきりしないがコリン作動性のため腸管のぜんどうの亢進がこれら患者にあるかも知れず、そのための吸収の障害かも知れない。
硫黄を含んだアミノ酸は炎症において活性酸素に抵抗する重要な役割を果たす⑧。

芳香族アミノ酸は遊離基の消滅、神経伝達物質の先駆物質の役割を演ずる。

以上から、化学物質過敏症の病態生理学的な追求は蛋白質代謝の障害という点にフォー、カスを合わせねばならない。

つまりアミノ酸の排泄が化学物質過敏症患者と対照群とで明確に区別されることは極めて重要な事実であるとしている。
以上は主に内科学的な面からの化学物質過敏症に対する紹介であるが、感覚系の異常を訴える患者も多い。

それは、手や足先のしびれ、嗅覚の低下、眼のかすみ、ピンポケ、眼痛、まぶしさなどである。

そこでわれわれは次の研究を行なった。

化学物質過敏症と瞳孔反応ー自律神経異常-
すでに、1971 ~ 73年頃に著者、宇尾野らは、微量のマラチオン空中散布による長期間にわたる、微量の有機燐摂取の患者にコリン性の自律神経症状と、瞳孔反応に異常があること、とくに収縮系の瞳孔括約筋の機能に異常があることを報告した。

最近、白川らは有機塩素系殺虫剤、除草剤による中毒患者の孔反応では、臨床的な自律神経系の異常とともに光刺激前瞳孔面積、散瞳系の速度因子の低下を報告した(引)。

辻沢は184人の化学物質過敏症であるとダラス環境医学研究所で診断された患者の瞳孔反応を詳細に調査している。

コントロールは年令のはほマッチした200名の正常者である。得られた結果は次の通りである。
1 )暗順応15分後の瞳孔の大きさは、対照と比較して有意に小さいもの26名(14 % )、大きいもの22名(22 % )。
2 )収瞳系(瞳孔括約筋)機能では36名( 19.6 % )が遅く、5名(3.3 % )が遅い。
3 )散瞳系(散大筋)機能では、56名(30.4 % )が遅く、10名(5.4 % )が速かった。4 )散瞳時間は75名(40.8 % )で遅延していた。
以上から化学物質過敏症患者は、交感神経系の機能不全が多く、副交感神経系の異常を有するものの存在も考えられた。

いずれにしろ対光反応の分析は、本症の診断に極めて重要である。
まとめ今回の総説では、本邦ではまだ余り知られていない化学物質過敏症の臨床所見の外国例を紹介し、臨床症状、生科学的所見、さらにnon-invasive methodとして注目されている赤外線電子瞳孔計の瞳孔反応所見等について簡単に紹介した。
今回の症例では従来の概念で中毒性疾患を考えていたよりもはるかに微量な化学物質により、MCSという疾患が発現することはもはや疑いもない事実となってきた。

今後薬物の毒性評価基準等を作る際にも大いに検討されるべき重要な問題を含んでいることは明かであるし、医学会においても基礎および臨床においてもこの疾患の分類、診断、治療法等をわが国でも確立する必要がある。

そしてそれらの患者を治療する施設の設置が強く望まれる。

(文献割愛)