妊婦を有害化学物質から守るために | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/

・妊婦を有害化学物質から守るために
―遅れる日本の産婦人科学会の対応
理事 水野玲子
妊婦のばく露削減を目指す
欧米の産婦人科学会
 この数年間、欧米の産婦人科学会は健全な妊娠・出産を進めるためには、妊婦を有害化学物質から守ることが急務であるとの声明を出しています。

その声明では、医師にとっても妊婦にとっても有害化学物質の知識は不可欠であり、その重要性を学会として認識し、妊婦の有害化学物質ばく露の削減を目指すべきであると表明しています。

医療関係者、とくに妊婦や子どもを守る立場の産婦人科や小児科医こそ、患者が有害な化学物質にさらされないように指導し、また、その悪影響についても指導してもらいたいものです。
2013年に英国、14年に米国の学会が声明 2014年当会の「ニュース・レター」91号の新春対談では、立川涼代表が2013年に英国で発表された産婦人科学会の「妊娠中の女性のために」という声明に触れました。

妊婦の有害な化学物質ばく露を減らすために、プラスチックや農薬、新しい家具や車の購入などを減らすべきであると勧告したことを取り上げ、その日本版を作るべきであると述べました。
 その翌年、今度は米国の産婦人科学会(ACOG)と生殖医療学会(ASRM)が共同で「環境毒性化学物質へのばく露に関する委員会声明」を発表し、患者の環境毒性化学物質のばく露を減らすことが生殖医療の観点からも重要であるとしました。

ある種の化学物質を胎児期にばく露すると小児がんになりやすかったり、成人した男性が農薬にばく露すると精子数が減少したり不妊を引き起こしたりする可能性があるなど科学的証拠は十分に蓄積されています。
 こうした勧告が出された米国でも、産婦人科医の有害化学物質への対応は必ずしも十分とはいえません。

米国カリフォルニア大学が全米の産婦人科医2500人を対象に、妊婦に有害な環境化学物質の問題をどう指導しているかを調査したところ、80%近くの産婦人科医が妊婦への有害物質の危険性について認識しているものの、妊婦と有害物質について実際に話をしている医師は20%未満でした。

さらに有害化学物質に関する講習を受けたことがある医師は15人に1人に過ぎませんでした。
国際産婦人科連合2015年の意見書



 そして昨年、世界125か国の産婦人科団体を代表する国際産婦人科連合(FIGO)は、過去40年間における有害化学物質ばく露の増加が、人の生殖と健康を脅かしているとの意見を公表しました*1。

そこでは流産、死産、先天異常、生後に現れるADHDや神経・発達・行動異常などの増加は、大気汚染や生活環境における、プラスチックなどの化学物質や農薬などの妊婦のばく露に関連する可能性があると指摘されています。FIGOが産婦人科医、生殖医療の専門家、助産師、看護師、保健専門医などに推奨したことは以下です。
(1)妊婦の環境化学物質へのばく露を低減させるための政策を積極的に推進する。
(2)有害化学物質フリーの飲料水や水銀を含まない魚類など、より安全な食料の摂取を勧める。
(3)医療において有害化学物質が健康に及ぼす影響を重要な問題として位置づける。専門家は有害化学物質について学び、患者の初診時には過去の有害化学物質ばく露について聞くべきであり、患者もいかにして有害化学物質を避けることができるかについての知識を得るべきである。
(4)有害化学物質に特に影響を受けやすい妊婦や胎児・乳幼児、また、社会的にも人種、所得などの差で多くの有害化学物質にばく露を強いられる集団が存在するため、環境正義の問題は重要である。産婦人科の専門家は、環境正義に向けて環境弱者を守るための政策を実践すべきである。

日本産婦人科学会の認識は?
 こうした国際的な動きについて、日本産婦人科学会はホームページでFIGOの活動について紹介しているものの、有害化学物質については何も触れていません。有害化学物質が生殖に及ぼす影響についての認識は、日本ではまだ産婦人科医たちに共有されておらず、他の医学会でもほとんど注目されていません。
 最近、日本産婦人科学会で出された声明は、欧米とはかなり次元の違うもので、子宮頸がん予防ワクチン(HPV ワクチン)の勧奨再開への学会声明(2015年9月1日) です。若い女性の被害者が多数発生したにもかかわらず、ワクチン接種後の副反応として見られた慢性疼痛や運動障害などは機能性身体症状によるものとし、ワクチン接種との因果関係を示す科学的・疫学的根拠は得られていないとしたのです。
有害化学物質の害について認識するどころか、多くの被害者が出たワクチンを再度使用勧奨する日本の学会が、化学物質の負の側面に目を向けるのはいつのことになるのでしょうか。
*1  International Federation of Gynecology
and Obstetrics( FIGO). Oct 2015.

羊水からダウニーの匂い?
「羊水にダウニーの匂いがした」という助産婦さんや産婦人科のお医者さん
の話をチラホラと聞くようになりました。

化学物質が胎盤を通過する可能性は
摘されていますので、皮膚から体内に入った合成洗剤や柔軟剤の匂いの成分(化学物質)が羊水に届くことも考えられます。

過熱する匂いブームの影響は、とうとう生まれる前の赤ちゃんにまで届きはじめたのです。
 そもそも匂いの成分は、様々な低濃度の化学物質を複合して作られていま
す。

その中には石油化学製品の原料となる化学物質もたくさん含まれているにもかかわらず、安全な物質だけではないことがすっかり忘れられています。
 10年ほど前にP&G の衣類用柔軟仕上げ剤「ダウニー」が輸入され始めて
から、2008年には花王、P&G、ライオンの大手3社が香り付き柔軟剤を次々
と発売しており、この市場は大きく成長しています。

それが追い風となって匂
いブームは熱を増し、驚くような製品も出てきました。体臭除去デバイスの特
許を取得した会社すらあります。

体臭がキツイと判断すると自動的に良い香りを放つ仕組みや、香りをアロマカプセルに閉じ込め、汗をかくなど水分と接触したときにカプセルが少しずつはじけて香りを出す仕組みがその一つです。
その他にも、自動車の中で匂いを放ち続ける車アロマディフューザーなど、香
りビジネスの拡大は勢いを増しています。
 一方で、匂いブームと同時にそれらの匂いに耐えられないという「香害」被
害者が続出しています。過ぎたるは及ばざるがごとし。

何事も度が過ぎてエ
スカレートすると想定外の問題が生じるのです。匂いブームに便乗しようと躍
起になっている企業が勢いを増すなか、行政、学会を含めて社会全体がこの
動きにブレーキをかける必要が出てきました。

3月12日予定のシンポジウム
「においブームの落とし穴 香料や柔軟剤、広がる香害の原因はどこに?」
が、そのきっかけとなれば幸いです。(理事 水野玲子)