殺菌剤「トリクロサン」EUで規制強化へ | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
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・殺菌剤「トリクロサン」EUで規制強化へ
事務局・ジャーナリスト 植田 武智
 EU(欧州連合)では、石けんなど衛生用品への殺菌剤「トリクロサン」の使用が禁止されました。
アメリカでも殺菌剤入りの石けんの規制の見直しが進行中です。感染症予防には普通の石けんと流水による洗浄で十分です。

不必要な殺菌剤入りの石けん等の使用は見直しましょう。
 殺菌・消毒の効果をうたう石けん(以下、薬用石けんと言う)やハンドソープ、マウスウォッシュなどに殺菌成分として使われている「トリクロサン」は、私たちの生活の中で最も身近にある環境ホルモンのひとつです。

甲状腺ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンをかく乱する作用が指摘されています。

胎児期や新生児期の甲状腺ホルモンのかく乱は、脳神経の発達への影響が懸念されますが、そうした影響をみる動物実験はまだ行われていません。
 また人体への影響だけでなく環境中の生物への影響も懸念されています。トリクロサンは環境中で分解されにくく、また熱や紫外線に反応してダイオキシンが発生することも指摘されています。
 EU では、こうした人間や環境中の生物への影響を考慮してトリクロサンの規制強化を進めています。

農業用途以外の殺虫剤や殺菌剤を「殺生物剤」と定義し、「殺生物剤規制」という法律によって、用途に応じて使用できる殺生物剤を決めています。
この殺生物剤規制を所管する欧州化学機関(ECHA)が、2015年6月25日に、人の肌や頭皮の殺菌効果を目的とする衛生用品へのトリクロサンの使用を禁止する決定を下しました。
 ただ、この規制の効果については不明な部分もあります。

というのもEU の化粧品規制ではトリクロサンが保存料として認められているからです。

使用上限値は配合濃度で0.3%ですが、マウスウォッシュだけは0.3%では安全だと言えないとして、2014年4月に上限値が0.2%へ下げられたばかりです*1。
 薬用石けんや薬用マウスウォッシュに対して、化粧品規制と殺生物剤規制のどちらの規制が優先されるのか、今後、注意してみていく必要があります。

アメリカでも再評価中
 アメリカでは食品医薬品局(FDA)が、石けんへのトリクロサンをはじめとする殺菌剤の使用の是非を見直すと2013年12月16日に発表しました。
 殺菌剤入りの石けんと普通の石けんを使い続けたグループの感染症の発症具合を調べた4件の調査があります。

これらの海外で行われた数百人規模の実験では、普通の石けんと比べて効果の差はみられませんでした*2。

普通の石けんでも流水でよく洗うことで細菌やウイルスは洗い流されるので、十分効果があるということです。
 効果がないだけならばまだよいのですが、これらの調査では、殺菌剤入りの石けんを使い続けることで、一部の細菌が耐性を獲得し、さらにトリクロサン以外の殺菌成分や抗生物質へ耐性をもった菌を増やす可能性も示されています。
 アメリカの食品医薬品局は、殺菌剤入りの石けんを販売している企業に対して、普通の石けんよりも感染症予防などの効果があるという証拠の提出を求めていて、明らかに効果があるという証拠が示せない場合、殺菌剤入りの石けんは販売できなくなります(現在も評価は継続中です)。

海外メーカーはいち早く使用自粛を公表
 また海外では、消費者団体や環境団体が使用禁止を求めるキャンペーンも盛んです。

ヨーロッパ最大の消費者団体の連合体である「欧州消費者連盟(BEUC)」は、2012年に化粧品などへのトリクロサンの使用を制限するよう声明を発表しています。
 また訴訟社会アメリカでは、トリクロサンを配合した石けんを販売するメーカーに対して、本当は感染症予防などの有効性はないのに詐欺的広告を行ったとして集団訴訟が起こされています。

企業は2015年6月に200万ドル(2億5000万円)で和解を交渉中です。
 こうしたなか、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社は、2014年中に全商品でトリクロサンの使用を中止すると2013年9月に発表。

続いてジョンソンエンドジョンソン(J&J)社も2015年中に全商品のトリクロサン使用中止を発表しています

また化粧品大手のエイボン(AVON)も、新商品へのトリクロサンの使用を中止、既存商品については仕様を変更すると2014年4月に表明しています。

日本でトリクロサンを使った商品は?
 日本ではどうでしょう。トリクロサンの抗菌効果を国(厚生労働省)が認めているために、殺菌・消毒の有効成分のひとつとして薬用石けんなどの医薬部外品に使われています。

欧米のようにトリクロサンの危険性は公には問題にされていませんが、企業の間では秘かにトリクロサン離れが起きているようです。
 数年前までは、薬用石けん以外にも制汗スプレーやスティックやボディペーパーなどにトリクロサンを使用したものが存在しましたが、2015年段階ではほぼ別の成分に変更されているようです。
 日本の薬用石けんや薬用ハンドソープなどでトリクロサンが使用されている主な商品を調べて表にまとめました。
「薬用石けんミューズ固形」に使われている「トリクロカルバン」は、構造がトリクロサンと類似しており、同様に環境ホルモン作用が指摘されているので要注意です。



 またトリクロサンは歯磨き粉、マウスウォッシュにも使われています。実は歯磨き粉に使われるトリクロサンには、歯肉炎(歯周病の軽い段階で歯茎にとどまっている段階)の予防効果が認められているので、欧米でも禁止されていないのが現状です。
 日本では、殺菌剤を使った薬用歯磨きや薬用マウスウォッシュは医薬部外品となり、国の審査と承認が必要となります。

それらの承認基準では、トリクロサンの配合濃度は薬用石けんなどには0.1~0.3%、歯みがき粉類には0.02%と決められています。

しかしこの配合濃度は、これ以上は配合できないという意味ではなく、基準内ならば提出資料が不要というだけ。基準以上に入れたい場合、個別審査になるのです。

実際に歯肉炎予防などの効果が検証されているのは、0.3%含有の歯みがき粉を使ったものがほとんどです。

メーカーや厚労省に尋ねても「個別審査で承認されているので安全」と言うだけで、個別の商品のトリクロサンの配合濃度は社外秘として教えてくれません。
 欧州連合やアメリカでは、行政が積極的に規制に向けて動いており、それに応じて企業も使用中止を公表することで自社製品の安全性をアピールしています。

一方日本では、医薬部外品については行政が個別に審査し承認しているから安全という建前に終始し、審査の中身については非公表。

企業は企業秘密だとしてデータを公表しません。その結果商品の安全性について国民がチェックできないという仕組みが続いているのです。
 
*1 Commission Regulation( EU) No 358/2014
*2 http://www.ncbi.nlm.nh.gov/pubmed/17683018

runより:ミューズは医師が使うので苦手ですY(>_<、)Y