エチレングリコールは、最低3年から最高9年にわたってイヌに対して1日に体重1kg当たり0.235~0.4gを投与した実験では、腎臓の病変は認められませんでした。
一方、ラットに対してエチレングリコールを0.1~4%含むえさを食べさせた実験では、0.5%以上含むえさを食べさせたオスに腎臓の石灰化が、そして4%含むえさを食べさせたメスに結石が認められました。
ただし、1%および2%を含むえさを2年間ラットに食べさせた実験では、腫瘍の発生は認められませんでした。これらの実験データも同書に掲載されています。
ここで、いずれの実験でも腫瘍の発生が認められなかったことがひとつのポイントとなります。
もし腫瘍が発生していた場合、それは発がん性物質として扱われ、放射線と同様に閾値(しきい値:これ以下なら安全という値)は存在しないことになります。つまり、どんなに微量でも危険性があるということです。
反対に腫瘍が発生しなかった場合は、閾値を設定することができます。
テレフタル酸の場合、1%を含むえさでは異常は認められませんでした。
人間と実験動物との種差および人と人との個人差を考慮して安全係数は100となるので、「1%×1/100」という計算になり、すなわち0.01%となります。
つまり、これ以下なら影響はないと考えられます。
エチレングリコールの場合、イヌの実験では1日に体重1kg当たり0.235gの投与量では腎臓に病変は認められなかったので、「0.235×1/100」で、0.00235g以下なら影響はないと考えられます。
これは、たとえば体重10kgの子供なら0.0235gとなります。またラットの実験では、0.4%以下の場合異常は認められていないと判断されるので、「0.4%×1/100」で、0.004%以下なら影響はないと考えられます。
前出のPETの溶出実験ではシートのほうが溶出量は多かったので、そちらを採用し、、テレフタル酸の溶出量は0.037ppm、エチレングリコールは0.072ppmです。
それらはパーセントに直すと、0.0000037%、0.0000072%となります。
動物実験ではえさを与え、ミネラルウォーターや茶系飲料は飲み物ということで、違いはありますが、それを考慮しても、これらの値は、実験結果から影響がないと考えられる値よりもかなり小さいことになります。
また、1本(500ml)の飲み物に溶け出しているエチレングリコールの量は、約0.000036gと計算されます。
これも、影響がないと考えられる値よりもかなり小さいことになります。
以上のことから、飲み物のペットボトルの人体への影響はほとんどないといえるでしょう。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)
runより:リサイクルで服にしてますがそれも大丈夫なんですかねぇ(´・ω・`)