5. 黄砂の特徴と分類
5.1 分類の方法
黄砂の特徴をみるために、気圧配置、砂塵嵐の発生状況、SPM 濃度全国分布、後方流跡線、CFORS、ライダー黄砂消散係数、消散係数とSPM 濃度の同期の有無、硫酸イオン濃度時間値、PM2.5/SPM 比などを集約した。
これらのデータを基に、単純黄砂、硫酸塩エアロゾル、これらの混在したものの大きく3 つのパターンに分類することを試みた。
黄砂飛来の把握には、アジア中央部での黄砂の発生状況、日本南岸に前線が位置する気圧配置、モンゴルからの方向を示す後方流跡線、ライダーでの黄砂消散係数とSPM 濃度の同時上昇、小さなPM2.5/SPM 比などがその判断として有効と思われた。
また、硫酸塩エアロゾルの飛来については、硫酸イオン濃度上昇、中国沿岸部からの方向を示す後方流跡線、大きなPM2.5/SPM 比などをもとに判断した。
5.2.黄砂事例の特徴
平成20(2008)~22(2010)年度の3 年間の黄砂日を中心に合計30 事例について、気圧配置、砂塵嵐の発生状況、SPM 濃度全国分布、後方流跡線、CFORS、ライダー黄砂消散係数、黄砂消散係数とSPM 濃度の同期の有無、硫酸イオン濃度時間値、PM2.5/SPM 比などのデータを各事例毎に整理して特徴付けを行った。
5.3. 分類結果
30 事例について、単純黄砂、硫酸塩エアロゾル、硫酸塩エアロゾルとの混在黄砂の3つに分類を行った。
その中で、特徴が明確であった単純黄砂4 事例、硫酸塩エアロゾル3事例、混在黄砂8 事例を抽出した。
混在黄砂については、硫酸塩エアロゾルが黄砂と同時に飛来しているケース、硫酸塩エアロゾルが先に飛来しその後黄砂が来るケース、さらに、南に硫酸塩エアロゾル北に黄砂と地域で分かれるケースに分類できるような特徴がみられた。(以下事例の期日毎の括弧は事例番号)
単純黄砂
(15)平成22(2010)年3 月16 日~17 日
九州から山陰を中心にSPM が上昇しており、中規模の黄砂で、硫酸イオンの濃度も低く硫酸塩エアロゾルの影響は少ない。
(26)平成22(2010)年12 月11 日~12 日
九州・中国へ飛来してきた黄砂。
(17)平成22(2010)年4 月2 日~3 日
北日本に飛来してきた黄砂で、3 日には九州へも来ている。硫酸エアロゾル飛来の様子はない。
(9)平成21(2009)年4 月25 日~26 日
沖縄を中心に飛来してきた黄砂。
(29)平成23(2011)年3 月20 日
東北地方を中心に飛来してきた黄砂。
混在黄砂
(同時飛来)
(22)平成22(2010)年5 月20 日~22 日
全国的に広がり濃度も高い黄砂であるが、同時に九州には濃い硫酸塩エアロゾルも飛来している。
(4)平成21(2009)年2 月11 日~13 日
九州・中国・関西まで広範囲に黄砂が飛来している。同時に福岡での硫酸イオン濃度も非常に高い。
(8)平成21(2009)年3 月16 日~19 日
大きな黄砂であるが、硫酸塩エアロゾルの上昇もみられる。中国、韓国でPM10 が高濃度を示し。更にソウルでは17 日にHaze と黄砂を観測している。
(25)平成22(2010)年12 月3 日~4 日3 日は、福岡でSPM の上昇と同時に硫酸イオンも上昇している。黄砂とともに到来したと考えられる。
(硫酸塩エアロゾル先行)
(16)平成22(2010)年3 月20 日~24 日
硫酸イオンは19 日21 時に19.6μg/m3 となり、20 日に次第に減少した後、20 日18時頃から、過去最大級の黄砂(最高800μg/m3 超)が飛来している。その後、SPM 高濃度は北上し北海道まで広がった。濃度のピークは2 時間毎に北に移動し、21 日18 時頃に千葉県付近を最後に終了している。
(24)平成22(2010)年11 月12 日~15 日
黄砂飛来直前に10μg/m3 を超える硫酸イオンが飛来し、その後は黄砂のみと考えられる。
(13)平成21(2009)年12 月26~27 日
関東や東北など全国的に広がった黄砂。硫酸イオンの上昇は20 日の夜中の1 時まででその後減少した。中国及び韓国で高濃度のPM10 が観測されており、韓国では25 日にHaze が観測されている。
(地域分離)
(11)平成21(2009)年5 月19 日
東北を中心に飛来した小さな黄砂。九州で硫酸塩エアロゾル飛来の様子がある。
硫酸塩エアロゾル
(28)平成23(2011)年2 月4 日~9 日
東アジア全域でHaze が観測され、SPM 濃度も最高で400μg/m3 を超す地点があり、全国的に広がる大規模な煙霧であり、硫酸イオン濃度も高い。
(2)平成20(2008)年5 月22 日~23 日
東北・北海道は黄砂の可能性があるが、全体としては硫酸塩エアロゾルの影響が大きい。
(10)平成21(2009)年5 月8 日
松江で夜に黄砂の痕跡はみられるが、オキシダント(Ox)も大きく上昇しており、硫酸イオンの上昇から主に九州地方に影響を与えた硫酸塩エアロゾルが中心である。