・Ⅲ.結果
遺伝子テスト:第二相の解毒系の遺伝子解析は、患者群によって、酵素の多型性に明らかな差が認められた。
A群の殺虫剤発症群では、グルタチオン-S転移酵素πに多型性(GSTP1*Bと*C)が71%という高頻度で認められた。
健常ヨーロッパ人では、B-Allele(対立遺伝子)は28%である。
C-Alleleは中部ヨーロッパ住民には極めて稀である20)。
B群の重金属負荷群の患者では、N‐アセチル転移酵素‐2(アセチル化が遅い)が87%に、グルタチオン‐S-転移酵素μ(GSTM-1-0型)が67%に、グルタチオン‐S-転移酵素θ(GSTT-1-0型)が20%に機能的に重大なミューテーションが認められた。グルタチオン‐S-転移酵素π(GSTP1)の多型性の割合は中部ヨーロッパ正常人のそれとまったく一致した分布を示していた。
C群の有害物質歴の明らかでない患者では、第二相の分解酵素の多型性分布で、中部ヨーロッパの住民の正常群とまったく一致した分布を示していた。
すなわちアセチル化の遅い酵素は55%に(中部ヨーロッパの住民の正常群では平均57%)、グルタチオン‐S-転移酵素μ(GSTM-1-0型)が45%に(中部ヨーロッパの住民の正常群では平均49%)、グルタチオン‐S-転移酵素θ(GSTT-1-0型)が9%に(中部ヨーロッパの住民の正常群では平均5%)、そしてグルタチオン‐S-転移酵素π(GSTP1)B*-とC*-型が18%(中部ヨーロッパの住民の正常群では平均28%)であった。
酵素テスト:第一相酵素CYPILA2のタンパク量測定では、C群の2名を除いて、平均して高値が認められ、酸化的ストレス状態にある事が証明された。一方すべての群を通して、患者の83%に第一相酵素CYPIIが0.16SEM以下と低下を示していた。(表1、3参照)
患者の46%には第二相解毒酵素のGST‐αのタンパク量の低下が認められた。
2名の患者についてのみ、GST‐αの高値が認められた。
第二相酵素GST‐μのタンパク量は17名に0.2U/ml以下の低値が認められ、0/0型の遺伝子のdeletion(染色体の欠失)を示唆しており、また実際に検査出来た18例(45%)にそれを裏付けるような遺伝子のdeletionが認められた。
GST‐θ‐タンパクの検査と遺伝子テストの結果と比較したが、同様によい一致が認められた。
さらにGST‐θ‐0型(0/0allele)を有していた4名では、タンパク量は0.3U/ml以下であった。
結局患者の75%にタンパク量1.6ng/ml以下という低下傾向が認められた。60%の患者で、GST-γタンパク量の増加が証明された。
ただ、2例(5%)に低下が認められた。
これらの結果は表1-3に示した。