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化学物質過敏症(5)Q&A 環境変えて症状改善
1970年、岡山大医学部卒。
県立広島病院小児科、高知医大(現・高知大)小児科助教授などを経て2000年から現職。
日本アレルギー学会認定指導医。
化学物質過敏症の発症の仕組みや治療法について、国立病院機構高知病院(高知市)副院長の小倉英郎 おぐらひでおさんに聞きました。
――室内の化学物質などの影響で起こるシックハウス症候群とどう違うのですか。
「シックハウス症候群は、室内の合板などの接着剤や塗料が空気中に揮発し、吸い込むことで起こります。広い意味では、室内のカビやダニなどで引き起こされる体調不良もシックハウス症候群と呼びます。しかし今は、化学物質が原因のものだけをシックハウス症候群と呼ぶ場合が多く、化学物質過敏症の一部と捉えてよいと思います」
――化学物質過敏症はどのように起こるのですか。
「詳しい発症の仕組みは分かっていません。発症までの経緯も様々です。揮発性の化学物質が多い環境で長く過ごした人が発症しやすいのですが、火事の消火作業にあたった人が煙を多く吸い、直後に発症した例もあります。日本では使用していない化学物質を多く使った海外製の木製カラーボックスをいくつも買い、寝室に置いて一晩寝ただけで発症した人もいます」
「反応する化学物質は人それぞれですが、主な原因は空気中の化学物質ですので、肺から取り込まれ、脳に直接影響するのかもしれません。免疫の一種であるIgE抗体によって引き起こされるアレルギーとは、発症の仕組みが異なります。化学物質が鼻の神経を伝わり、脳に直接達するという説もあります。まだ研究が必要な病気ですが、患者さんが多く存在している以上、医師はできる限りの対応をしなければなりません」
――患者の中には、うつ病や不安障害などの精神疾患が疑われた人もいます。化学物質過敏症の訴えと精神疾患をどのように見分けているのですか。
「検査でほかの身体疾患を除外したうえで、発症までに身の回りにどのような化学物質があったのかなどを詳しく聞きます。症状は慢性的で、化学物質の少ない環境に行くと症状が改善するなどの状態がみられることも診断のポイントです。加えて、症状を自覚する以前に精神疾患を発症していなければ、化学物質過敏症を疑うべきでしょう」
――患者は電磁波でも体調を崩す人が目立ちます。なぜなのでしょうか。
「詳しくは分かりません。ですが、合併する人が多いことは確かです。避難先に携帯電話の中継基地局ができ、頭痛やめまいなどでいられなくなる人もいます。問題は深刻化しています」
――化学物質過敏症はどう治療しますか。
「解毒作用があるタチオンやビタミンCなどを処方することはありますが、化学物質の少ない環境で過ごすことが第一です。香水などをつけた人と出会ったら、その場をすぐ離れるなどの対処法を身につけることも大切です。こうした工夫で私の患者さんの7割は症状が軽くなっています」(佐藤光展)